1on1を準備する
上司との 1on1 を「特にないです」で終わらせないためのシートです。30分の 1on1 で、話したいこと1つ・上司に頼みたいこと1つ・次の1週間でやること1つが決まって出てくることを目指します。各シートに、使うフレームワークの根拠の強さと出典をつけています。
シートの流れ(案)
| シート | 使う型 | 根拠 | 何が終わるか |
|---|---|---|---|
| 1. 話したいことを1つに絞る | GROW モデルの G(目標)と R(現状) | 中〜弱 | 「特にないです」で終わらない |
| 2. うまくいったこと・困ったことを事実で書く | SBI(状況・行動・影響) | 中〜弱 | 感想でなく出来事で話せる |
| 3. 上司に頼みたいことを1つ決める | GROW モデルの O(選択肢) | 中〜弱 | 時間を「報告」でなく「相談」に使える |
| 4. 次の1週間でやることを決める | If-Then プランニング+目標設定理論 | 強 | 1on1 の後に行動が残る |
| 5. (後輩の 1on1 を持つ人向け)聞き方の確認 | 心理的安全性+アクティブ・リスニング | 中〜強/中 | 相手が話しやすい場をつくる |
シート1〜4は 1on1 を受ける側、シート5は持つ側に向けたものです。根拠が「中〜弱」の型は、考え方を支える研究はあるが、その型そのものを確かめた研究は少ない、という意味です。
見本:シート1をそのまま公開します
所要時間: 10分 使う型: GROW モデルの G(目標)と R(現状)(根拠: 中〜弱)
1on1 が「特にないです」で終わるのは、話すことが無いからではなく、選んでいないからであることが多い、とこのテンプレでは考えています(経験則で、調べた数字ではありません)。1on1 の前に、話したいことを1つに絞っておきます。
GROW は、1980年代の英国で Graham Alexander、Alan Fine、John Whitmore の3人が作ったとされるコーチングの質問の順番です(目標 Goal → 現状 Reality → 選択肢 Options → 意思 Will)。Whitmore の『Coaching for Performance』(1992年)で広まりました。このシートでは前半の G と R だけを使い、上司に聞かれる前に、自分で答えておきます。O はシート3、W はシート4で使います。
根拠について。職場のコーチング全体には、効果を示したメタ分析があります(Jones ら, 2016)。ただしその分析は GROW を扱っておらず、上司が部下に行うコーチングは対象から外されています。GROW という型そのものを確かめた研究は小規模です。なので「GROW で準備すれば 1on1 がうまくいく」とは言えません。ここでは、話題を1つに絞るための問いの順番として使います。また、GROW は本来コーチが相手に問いかける型で、自分で自分に問う使い方は、このテンプレの工夫です。
手順1 候補を3つまで出す(3分)
| 候補(最近気になっていること) | 気になり度 | 自分だけで進められる? |
|---|---|---|
| 仕事の中身: | 高・中・低 | はい・いいえ |
| 進め方・人との関わり: | ||
| これからのこと(学びたいこと・やってみたい仕事): |
選ぶ1つ: 気になり度が高く、「自分だけで進められる?」が「いいえ」のもの(上司の力を借りると進むもの)。全部「はい」なら、一番気になるものを「こう進めようと思うが、どう思うか」と聞く形にします。
手順2 G と R を書く(7分)
| 項目 | 書くこと | 記入 |
|---|---|---|
| 話したいこと | 「〇〇について相談したい」の形で1文 | |
| G:話し終えたとき、どうなっていたいか | 「〇〇が決まっている」「〇〇のやり方がわかっている」の形で。30分で届く大きさにする | |
| R:いま起きていること | 事実を2〜3個(いつ・何が・どれくらい)。気持ちは下の欄に分ける | |
| R:自分で試したこと | 試したことと、その結果。まだなら「まだ」と書く | |
| R:気持ち(書かなくてもよい) | 「焦っている」「迷っている」など一言 | |
| 最初の一言 | 1on1 の冒頭で言う1文。「今日は〇〇について相談させてください。〜できたらと思っています」 |
確認(全部「はい」になったら次へ)
- [ ] 話したいことは1つで、「と」「や」で2つ以上をつないでいない
- [ ] G は30分の会話で届く大きさになっている(「成長したい」ではなく「来月の〇〇の進め方を決めたい」)
- [ ] R に、いつ・何が・どれくらい、のわかる事実が1つ以上ある
- [ ] 自分で試したことを書いた(まだなら「まだ」と書いた)
よくある失敗
- G を大きくしすぎる(「この先のキャリアをどうするか」)。大きな話なら、「今日はその入口として、〇〇だけ聞きたい」と切ります。GROW は目標設定に偏るので、キャリアや人生の相談には向きにくい、という批判もあります(Passmore & Cantore, 2012。原文は未確認)
- R を飛ばして、いきなり答えを求める。上司は状況がわからないと答えられません。このシートで G の次に R を書くのは、そのためです
- 準備した紙を読み上げるだけになる。英国の医療人材育成機関の研修教材は「対話は必ずしもモデルの順番どおりでなくてよい」と書いています。順番は準備のためのもので、当日は上司の質問に合わせて構いません
記入例(架空)
設定(架空): 社員60人の住宅設備メーカー。入社2年目の営業事務が、課長との月1回の 1on1 に向けて書く。
| 項目 | 記入 |
|---|---|
| 候補 | ①見積書の作成が遅い(高・いいえ)②営業担当からの急ぎの依頼が重なる(中・いいえ)③来年は展示会の運営を手伝ってみたい(低・はい) |
| 話したいこと | 見積書の作成を速くする方法について相談したい |
| G | 来月の繁忙期までに、見積書1件にかける時間の目安と、そこまで縮めるために最初に変えることが決まっている |
| R:いま起きていること | 先月は見積書を28件作り、1件平均50分かかった(作業記録より)。同じ課の先輩は同じ種類の見積書を約30分で作っている(本人に聞いた) |
| R:自分で試したこと | 過去の見積書を写して使い回した。ただ、古い単価のまま出しかけたことが2回あり、結局すべて確かめ直している |
| R:気持ち | 遅いのは自分のせいだと思って、言い出しにくかった |
| 最初の一言 | 「今日は見積書の作り方について相談させてください。来月の繁忙期までに、何から変えるかを決められたらと思っています」 |
(②は①と根が同じかもしれないので、①の話の中で触れる。③は急がないので次回にまわす)
出典: John Whitmore『Coaching for Performance』Nicholas Brealey, 1992年(書誌を Open Library と Performance Consultants の公式ページで確認。本文は未確認)/InsideOut Development の公式ページ(3人の共同開発と、パブリックドメインではないという主張を確認)/Jones, Woods & Guillaume (2016) "The effectiveness of workplace coaching", Journal of Occupational and Organizational Psychology 89(2)(要旨を確認)/Health Education England Kent, Surrey and Sussex の T-GROW 研修教材(PDF、2022年8月作成)。
https://legacy.insideoutdev.com/?p=151
https://kss.hee.nhs.uk/wp-content/uploads/sites/15/2022/08/Coaching-for-success-TGROW.pdf
記入テンプレを準備しています
このフレームワークを、仕事の場面でそのまま使えるシートにまとめています。欲しいものを1つ選んでください。
ありがとうございます。準備ができたら、このサイトでお知らせします。
試作中のため、選んだ結果はこの端末の中だけに記録されます。外部には送られません。