SWOT分析
まず知る
- SWOT は誰もが知るが、起源は SRI の研究チームか Harvard の教科書か諸説あり、「誰々が発明」と断言できる根拠は弱い。(出典: https://research.utwente.nl/en/publications/the-origins-of-swot-analysis/、https://rapidbi.com/history-of-the-swot-analysis-3/、https://rapidbi.com/history-of-swot-analysis-the-error-many-on-the-internet-make/amp/)
- 効果を実証した研究は見つからず、英国の調査では、使われた SWOT は長いだけで戦略に使われていなかった。(出典: https://ora.ox.ac.uk/objects/uuid:e44a6a9e-9537-4fb6-848c-2d20998a7ce6)
- 元の方法は「課題を挙げて分類し、議論して計画に上げる」参加型の手順。表を埋めて終わりにしないのが肝。(出典: https://research.utwente.nl/en/publications/the-origins-of-swot-analysis/)
- 使うなら、項目は少なく、競合や顧客の事実で裏付け、最後に「だから何をするか」まで決める。
- 日本では自治体の総合計画や企業の会社説明資料で実際に使われている。ただし公開資料は「使った」ことは示しても、成果までは示していない。(出典: https://www2.jpx.co.jp/disc/96190/140120260430515764.pdf、https://www.city.utsunomiya.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/007/674/siminkaigizentaikaidai2kaisiryou2.pdf、https://www.city.suita.osaka.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/008/630/201282152238.pdf、https://www.city.konan.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/003/809/swot_bunseki.pdf)
使い方(手順と記入例)
手順
- 何のために分析するかを1行で決め、対象を1つにしぼる(例:「自分の就活で、受ける業界を決める」)。
- 強み・弱み(自分や自社の「中」のこと)を、比べる相手を決めたうえで、それぞれ3〜5個までに書く。
- 機会・脅威(自分では変えられない「外」のこと)を、ニュースや数字などの事実をもとに、それぞれ3〜5個までに書く。
- 各項目に根拠(数字・人から言われたこと)を1つずつ添え、根拠のないものは消すか「要確認」と書く。
- いちばん効きそうな「強み×機会」の組を1つ選び、「だから何を、いつまでにするか」を1文で書く。
記入例
架空の場面:大学3年の就活生Aさんが、受ける業界をしぼるために自分を分析した。
- ①目的と対象:「来年3月までに、受ける業界を2つにしぼる」。比べる相手は、同じゼミで就活中の友人たち。
- ②強み:飲食店のアルバイトで2年間、シフト表づくりを任されている。弱み:英語の資格を持っていない。
- ③機会:地元で観光客が増え、宿泊・観光の会社が人を求めている。脅威:第一志望の広告業界は人気が高く、倍率が高い。
- ④根拠:強みには「店長から任されている」、機会には「求人サイトで地元の観光業の求人が去年より多い」を添えた。「人と話すのが得意」は根拠がないので消した。
- ⑤だから何をするか:強み(シフトづくり)×機会(観光業の人手不足)から、「12月までに観光・宿泊の会社説明会に3社出て、現場をまとめる仕事の中身を聞く」と決めた。
できたかの目安
- 「だから何を、いつまでにするか」が1つ決まっていれば使えている。4つの箱に項目を並べただけなら未完成。
- 強みが「誰と比べて」の形で書け、各項目に根拠が付いていること。
なぜ効くか(短く)
SWOT は、自分の「中」のこと(強み・弱み)と「外」のこと(機会・脅威)を分けて並べ、両者がかみ合う所を探すための整理の型です。もとは、課題を挙げて4つに分け、みんなで話し合って計画に上げる進め方の一部だったとされます(出典: https://research.utwente.nl/en/publications/the-origins-of-swot-analysis/)。ただし、SWOT を使うと成果が上がることを確かめた研究は見つかっておらず、根拠は弱いです。英国の調査では、項目が多すぎて優先順位もなく、その後の戦略に使われていない SWOT が多く見つかったので、数をしぼって「何をするか」まで決めることが大切です(出典: https://ora.ox.ac.uk/objects/uuid:e44a6a9e-9537-4fb6-848c-2d20998a7ce6)。
根拠の強さと限界
評価: 弱(起源も効果も、確かな裏付けが乏しい)
- 起源が曖昧: 上表のとおり、原典の特定自体が議論中。「Humphrey が考案」と断言できる根拠は見つからなかった。
- 効果の実証が乏しい: SWOT を使った組織の方が業績が良い、という因果を示す研究は今回の調査で確認できなかった(網羅検索ではない)。
- 実務批判: Hill & Westbrook (1997)「SWOT Analysis: It's Time for a Product Recall」。英国貿易産業省の製造業向け計画支援スキームで、審査した50社のうち20社超が14のコンサル会社経由で SWOT を使っていた。どの適用も、項目が平均40超と長い、記述が一般的で意味が薄い、優先順位がない、検証がない、という特徴があり、出力が後の戦略プロセスで使われていなかった。著者は SWOT の継続使用に疑問を呈した(要旨を Oxford ORA の記録で確認。掲載誌・巻号は同ページに記載がなく、Long Range Planning 30(1), 46-52 は検索結果上の書誌で、DOI は未確認)。(出典: https://ora.ox.ac.uk/objects/uuid:e44a6a9e-9537-4fb6-848c-2d20998a7ce6)
- 擁護材料: Puyt らは、元の参加型の進め方には、戦略と実行の整合を助ける価値があるとみる(要旨)。つまり「道具が悪い」より「簡略化された使い方が悪い」という読みが成り立つ。(出典: https://research.utwente.nl/en/publications/the-origins-of-swot-analysis/)
使われた例(組織自身の公表と、研究・参考・手引きを分けて)
① 組織自身が使ったと公表した例(数えるのはここだけ)
自ら公開した資料のみ。いずれも日本の組織。
- イチネンホールディングス(東証プライム 9619)/2026年5月1日/「会社説明資料 May 2026」/自動車リース・ケミカル・パーキング・機械工具販売などの事業ごとに「セグメントSWOT分析」を載せた。例: パーキング事業では、強みに PFI 事業、弱みに同業との差別化の難しさ、脅威に参入障壁が低く競合が多いこと、都市部の価格競争を挙げる/結果: 資料は SWOT の近くに今後の施策(料金見直し、サービス品質向上など)を載せるが、SWOT から施策が導かれた過程や成果の検証は資料内にない。 https://www2.jpx.co.jp/disc/96190/140120260430515764.pdf
- 宇都宮市/2006年4月19日(資料日付)/宇都宮市サイト掲載の市民会議「第二回全体会 資料②」/6つの分科会(都市自治・教育文化振興・市民福祉・生活環境整備・産業振興・都市基盤整備)が2005年11月から強み・弱み、次に機会・脅威を検討し、SWOTクロス分析で分野ごとに重点課題を抽出した/結果: 資料時点で各分科会が5つ程度の重点課題を抽出した段階。以降4〜8月に施策・事業の提案、9月に提案発表会、という予定を載せる(予定のため実績は未確認)。資料名の正式な冒頭表題は取得できず、ファイル名と本文から判断。 https://www.city.utsunomiya.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/007/674/siminkaigizentaikaidai2kaisiryou2.pdf
- 吹田市/資料は2012年(PDFの更新日は2012年8月)、本文に「基本構想に関する中間報告(平成24年7月末)へ向けた検討」とある/総合計画見直しの検討資料/基本計画の検証シートからSWOT図を作り、見えた強み・弱みを今後どうするかを検討して「施策の基本方針」に置き換え、指標も検討する手順を示した。狙いとして「都市像ありきでなく根拠のある議論にする」ことを挙げる/結果: 本資料は手順の説明で、最終的な計画での成果は未確認。 https://www.city.suita.osaka.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/008/630/201282152238.pdf
- 江南市/年月は文書に明記なし(平成18年4月実施の市民意向調査を参照しているため、同年度以降の資料)/「SWOT分析について」(江南市戦略計画・基本構想の策定資料)/民間企業の手法であるSWOT分析を「本格的に取り入れる」と明記し、基本構想の「将来像」「地域経営のあり方」などの策定に活用した。外部環境は社会潮流とニーズで整理して機会・脅威に振り分け、内部は人・物・金・情報の4資源で強み・弱みを整理、推進・改善・縮小(回避)・撤退の4戦略に分類する様式/結果: 本資料は方法の説明で、成果は未確認。 https://www.city.konan.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/003/809/swot_bunseki.pdf
② 研究・評価として公表された試行/研究報告における実施例
- なし(確認できた範囲で)。
③ 近縁実践・参考例(原典との対応未確認)
- なし(確認できた範囲で)。
④ 手引き・解説(使用実績ではない)
- なし(確認できた範囲で)。
まとめ: 組織自身が使ったと公表した例は4件(いずれも日本。企業はイチネンホールディングスの1件、自治体は宇都宮市・吹田市・江南市の3件)。海外の自社公表事例は今回確保できなかった(検索で企業自身の開示を特定できず)。
うまくいかなかった例と批判
- Hill & Westbrook (1997)(研究者): 上記。実際の適用50社中20社超で、長いだけで優先順位も検証もなく、結果が戦略に使われていなかったと報告。要旨のみ確認。https://ora.ox.ac.uk/objects/uuid:e44a6a9e-9537-4fb6-848c-2d20998a7ce6
- Puyt, Lie & Wilderom (2023)(研究者): 元の SOFT/SWOT は参加型の長期計画プロセスだったと再構成し、現在の簡略化された使われ方との差を示唆する(要旨からの読み取りで、批判を明言しているかは本文未確認)。https://research.utwente.nl/en/publications/the-origins-of-swot-analysis/
原典を読む
- 原典1: Puyt, Lie & Wilderom (2023) 前掲。起源を知る最新の学術レビュー(英語、論文)。
- 原典2: Hill & Westbrook (1997) 前掲。批判の代表(英語、論文)。
- 日本語で読める SWOT 専用の定番書は、今回の調査では実在を確認できなかったため推薦しない。外部環境(機会・脅威)の分析を深めるなら、ポーター『[新訂]競争の戦略』(土岐坤・中辻萬治・服部照夫訳、ダイヤモンド社、1995年3月、ISBN 978-4-478-37152-7、500ページ。出版社ページで確認)が役に立つ。https://www.diamond.co.jp/book/9784478371527.html
原典で確かめたこと
起源は単一の原典が確定しておらず、少なくとも3系統の主張がある。
| 説 | 内容 | 確認状況 |
|---|---|---|
| SRI(スタンフォード研究所)説 | 1960〜70年の企業計画研究から。当初は SOFT(Satisfactory / Opportunity / Fault / Threat)で、のちに F が W に置き換わり SWOT になった。Albert Humphrey 本人の回想(2005年 SRI ニュースレター所収)は、研究は Robert Stewart が率い、Humphrey はチームの一員だったと述べる | Humphrey の文章は rapidbi.com による転載を開いて確認。SRI ニュースレター原本は未確認 (出典: https://rapidbi.com/history-of-the-swot-analysis-3/) |
| Harvard『Business Policy』説 | Learned, Christensen, Andrews, Guth『Business Policy, Text and Cases』(初版 1965、Irwin)が SWOT を最初に体系化したという説 | 本は未確認。コンサル会社 RapidBI の記事は「所蔵する1965年版(1967年4刷)に SWOT という語はなく、似た枠組みがあるだけ」と主張(個人の確認で、再検証できていない) (出典: https://rapidbi.com/history-of-swot-analysis-the-error-many-on-the-internet-make/amp/) |
| 学術レビュー | Puyt, Lie & Wilderom (2023)「The origins of SWOT analysis」, Long Range Planning 56(3), 102304, DOI 10.1016/j.lrp.2023.102304。文書調査と専門家インタビューで、元の SOFT/SWOT の手順を再構成した。原案者として Robert Franklin Stewart を挙げる | 大学リポジトリの要旨のみ確認。本文は403で開けず、未確認 (出典: https://research.utwente.nl/en/publications/the-origins-of-swot-analysis/) |
原典が主張していたこと(Puyt らの要旨による。本文は未確認):
- 元の方法は、各マネジャーが自部署の重要な計画課題を8〜10個挙げ、「守るべき満足な点/機会/直すべき欠点/防ぐべき脅威」の4つに分類する。(出典: https://research.utwente.nl/en/publications/the-origins-of-swot-analysis/)
- その後、マネジャーの小グループが関係者のニーズも含めて議論し、提案を経営陣の計画委員会に上げる。つまり「参加型・長期計画の進め方」の一部で、1枚の表を埋める道具ではなかった。(出典: https://research.utwente.nl/en/publications/the-origins-of-swot-analysis/)
- 現在の「2×2マトリクス」は後年の姿で、強み・弱みと機会・脅威を掛け合わせる TOWS は Weihrich が1982年に提案した(Long Range Planning 15(2), pp.54-66。書誌のみ検索で確認、本文は未確認)。(出典: https://doi.org/10.1016/0024-6301(82)90120-0)
出典
- https://research.utwente.nl/en/publications/the-origins-of-swot-analysis/
- https://rapidbi.com/history-of-the-swot-analysis-3/
- https://rapidbi.com/history-of-swot-analysis-the-error-many-on-the-internet-make/amp/
- https://ora.ox.ac.uk/objects/uuid:e44a6a9e-9537-4fb6-848c-2d20998a7ce6
- https://www2.jpx.co.jp/disc/96190/140120260430515764.pdf
- https://www.city.utsunomiya.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/007/674/siminkaigizentaikaidai2kaisiryou2.pdf
- https://www.city.suita.osaka.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/008/630/201282152238.pdf
- https://www.city.konan.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/003/809/swot_bunseki.pdf
- https://doi.org/10.1016/0024-6301(82)90120-0
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