フレームワーク大全原典と根拠を確かめた解説

根拠 弱確認日 2026-10-18

SCAMPER(スキャンパー)

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根拠の強さと限界

評価: 弱(SCAMPER そのものの効果を測った研究は、ほぼすべて人数が数十人規模・1か所だけの実験で、くじ引き分け(無作為化)かどうかも書かれていないものが多い。結果は「効いた」とするものが多いが、まとめて分析した研究では SCAMPER 型の訓練は最も効果が小さい部類に入ったという報告もある)。

SCAMPER を使った比較実験(確認できたもの)

研究対象・人数比べ方結果質の注意
İslim & Karataş (2016) *Turkish Online Journal of Educational Technology* 12月特別号トルコの高校生40人、情報(ICT)の授業実験群(事例学習+SCAMPER)と対照群(事例学習のみ)創造的問題解決と学業成績で有意な効果ありと要旨に記載無作為化の記載なし、期間・効果量は要旨に無く未確認
Yüzüak & Recepkethuda (2026) *Research in Science & Technological Education*トルコの中学1年生(7年生)43人(実験21・対照22)理科で SCAMPER 活動、事前・事後テスト+面接創造的思考と理科の成績で実験群の伸びが大きい小人数、期間の記載なし、「疲れた」「難しい」と答えた生徒もいた
Moreno ほか (2014) 国際デザイン会議 DESIGN 2014メキシコとシンガポールの38社の管理職60人(全員5年以上の管理経験)1回目は全員が自由に案出し、2日後に SCAMPER 群24人(15分の説明つき)と何も使わない群36人に分けて同じ課題2回目に新しく出た案の数と新しさで SCAMPER 群が有意に上分け方(無作為か)の記載なし。1回目の時点で両群の「同じ案へのこだわり(固着)」に有意差があった。課題は「未払い債権を減らす」1問だけ
Chulvi ほか (2013) *Research in Engineering Design* 24(1), 33-41設計チーム16組SCAMPER 7組・TRIZ 7組・ブレインストーミング1組・方法なし1組要旨は「方法により差があった」とだけ書き、どれが上かは要旨に無く未確認対照は各1組だけ

(出典: https://openaccess.ahievran.edu.tr/items/e3048ce3-a992-456e-a419-291efae90d2f、https://acikerisim.bartin.edu.tr/entities/publication/0b882eaf-5e7d-4daf-a5e9-87ce5413929a、https://doi.org/10.1080/02635143.2025.2575910、https://www.designsociety.org/download-publication/35202/CREATIVITY+IN+TRANSACTIONAL+DESIGN+PROBLEMS%3A+NON-INTUITIVE+FINDINGS+OF+AN+EXPERT+STUDY+USING+SCAMPER、https://perfilesycapacidades.javeriana.edu.co/en/publications/influence-of-the-type-of-idea-generation-method-on-the-creativity/、https://doi.org/10.1007/s00163-012-0134-0)

まとめて分析した研究(SCAMPER を含む「創造性を高める方法」全体)

  • Haase, Hanel & Gronau「Creativity enhancement methods for adults: A meta-analysis」*Psychology of Aesthetics, Creativity, and the Arts*(DOI 10.1037/aca0000557。受理原稿を Essex 大学のリポジトリで読んで確認)。大人を対象にした332の効果量を12種類の方法に分けて分析。創造性は平均して高められる(Hedges' g = 0.53、95%信頼区間 0.44〜0.61)。最も効いたのは複合的な訓練コース・瞑想・異文化体験(g = 0.66)。研究ごとのばらつきが大きく、「ときには逆の結果も出うる」と書いている。出版バイアスの証拠は見つからなかったとしている。(出典: https://repository.essex.ac.uk/34344/1/CreativityEnhancementMethods_accepted.pdf、https://doi.org/10.1037/aca0000557)
  • この論文の先行研究の紹介によると、Ma (2006) のメタ分析(34研究)では、全体の効果は d = 0.77 と大きかったが、「SCAMPER 法(Eberle 1996)」は12種類の訓練の中で最も効果が小さかった。ただしその結論は効果量わずか4つにもとづくので信頼性に疑問がある、と Haase らは注意している。Ma (2006) の原論文は未確認。(出典: https://repository.essex.ac.uk/34344/1/CreativityEnhancementMethods_accepted.pdf)
  • 注意: 「創造性訓練は平均して効く」という結果は、瞑想や長いコースなども含めた周辺領域の研究であり、SCAMPER 単独の効果の証拠ではない。

ブレインストーミングの研究との関係

  • Diehl & Stroebe (1987)「Productivity Loss in Brainstorming Groups: Toward the Solution of a Riddle」*Journal of Personality and Social Psychology* 53(3), 497-509(論文 PDF を開いて確認)。Osborn は1957年版で「ルールを守れば、人は1人より集団のほうが2倍のアイデアを出せる」と書いた(p.229 を引用)。しかし同論文がまとめた先行22実験のうち18で、同じ人数がばらばらに考えて案を足し合わせた「名目集団」のほうが、実際に集まって話す集団より多くの案を出していた(残り4つは2人組で差なし)。4つの実験の結果、主な原因は「誰かが話している間、ほかの人は待つしかない(発言の順番待ち=production blocking)」ことだった。評価される不安やただ乗りは主因ではなかった。(出典: https://homepages.se.edu/cvonbergen/files/2013/01/Productivity-Loss-In-Brainstorming_Toward-the-Solution-of-a-Riddle.pdf)
  • SCAMPER との関係: この研究が否定したのは「集団で話し合うと案が増える」という部分で、「問いのリストを当てると案が増えるか」を調べたものではない。SCAMPER は1人でも使える(ケンブリッジ大学のページも「グループ向けだが個人でも使える」と書く)。したがって、Diehl & Stroebe は SCAMPER の効果を否定も支持もしない。言えるのは「SCAMPER を会議で全員でやる場合、順番待ちのロスがかかるので、まず各自で書き出してから持ち寄るほうが理にかなう」という使い方の示唆まで。(出典: https://homepages.se.edu/cvonbergen/files/2013/01/Productivity-Loss-In-Brainstorming_Toward-the-Solution-of-a-Riddle.pdf、https://www.ifm.eng.cam.ac.uk/research/dmg/tools-and-techniques/osborns-checklist/)

まとめ

  • 小さな比較実験では「SCAMPER を使った群のほうが案が多い・新しい」という結果が多い。ただし人数が少なく、1か所だけ、無作為化の記載なし、効果量の報告なしのものが中心。効果が出なかった研究が発表されにくい偏りも否定できない。
  • 「何も使わない」と比べて差が出るのは、問いのリストという道具の力なのか、単に「もう一度、時間をかけて考えた」からなのかを区別できる設計の研究は、確認できた範囲では見つからなかった(未確認)。
  • 職場で SCAMPER を使ったら売上や成果が上がった、という質の高い研究は見つからなかった(未確認)。

使われた例(組織自身の公表と、研究・参考・手引きを分けて)

組織自身が使ったと公表した例

  • なし(確認できた範囲で)。英語・日本語で「自社(自治体)で SCAMPER を使って○○を作った」と組織自身が公表した一次資料は見つからなかった。

研究・評価として公表された試行/研究報告における実施例(組織名非公表・前後比較。実施は効果の証明ではない)

  1. メキシコとシンガポールの38社(製品の会社17・サービスの会社21)の管理職60人/2014年発表/Moreno, Yang, Hernández, Wood(国際デザイン会議 DESIGN 2014 の論文)。会社名は非公表。「未払い債権を減らす」という課題で、15分の説明のあと SCAMPER を使った群(24人)と使わない群(36人)を比べた。/結果: SCAMPER 群のほうが新しい案が多かった(上の表を参照)。ただし1回だけの実験室的な課題で、会社の業務で成果が出たという話ではない。(出典: https://www.designsociety.org/download-publication/35202/CREATIVITY+IN+TRANSACTIONAL+DESIGN+PROBLEMS%3A+NON-INTUITIVE+FINDINGS+OF+AN+EXPERT+STUDY+USING+SCAMPER)
  2. トルコの高校(ICT の授業、40人)/2016年発表/İslim & Karataş。学校名は要旨に無い。/結果: 対照群より創造的問題解決・成績が上と報告。無作為化の記載なし。(出典: https://openaccess.ahievran.edu.tr/items/e3048ce3-a992-456e-a419-291efae90d2f)
  3. トルコの中学校(理科、43人)/2026年掲載(DOI は2025年付番)/Yüzüak & Recepkethuda。/結果: 対照群より伸びが大きいと報告。小人数。(出典: https://doi.org/10.1080/02635143.2025.2575910)

近縁実践・参考例(原典との対応未確認・事例には数えない)

  • 見つからなかった。「チェックリストで発想する」実践は多いが、Osborn や Eberle の型に沿っていると確認できるものは無かった。

手引き・解説(使用実績ではない)

  • ケンブリッジ大学工学部 Institute for Manufacturing(設計管理グループ)の「Osborn's checklist」: 9つの問いと使い方(カードに書いてランダムに引く等)を紹介。効果のデータは無い。(出典: https://www.ifm.eng.cam.ac.uk/research/dmg/tools-and-techniques/osborns-checklist/)
  • トロント大学 Centre for Research and Innovation Support の「Facilitation Toolkit」(2021年3月23日更新): ワークショップでの進め方(時間が無ければペアごとに2つの問いを担当する等)。提唱者名・効果・大学自身の使用結果の記載は無い。(出典: https://cris.utoronto.ca/facilitation-toolkit/scamper/)
  • 日本語の解説記事(例: 人事系メディア「カオナビ」2026年8月13日): 「9項目」と SCAMPER の対応表を載せ、「圧倒的にアイデアが出てきやすい」と書くが、研究の出典は無い。エジソンの蓄音機などの例は個別の成功談で、チェックリストを使った証拠ではない。(出典: https://www.kaonavi.jp/dictionary/osborne_no_checklist/)
  • 研修会社・ホワイトボードツール会社(テンプレート配布)の解説は多数あるが、いずれも解説・宣伝で使用実績の公表ではない。

まとめ: 組織自身の公表例は「なし」。研究報告における実施例は3件(会社38社の管理職を対象にした実験1件、トルコの学校2件。いずれも組織名非公表、小規模)。手引き・解説は大学や人事系メディアにあるが、使用実績ではない。

うまくいかなかった例と批判

原典を読む

原典で確かめたこと
  • SCAMPER とは: 今ある商品・サービス・やり方に、7つの問いを順番に当ててアイデアを出す発想法。S=Substitute(代える)、C=Combine(組み合わせる)、A=Adapt(ほかから借りる)、M=Modify / Magnify / Minify(変える・大きく・小さく)、P=Put to other uses(別の使い道)、E=Eliminate(なくす)、R=Reverse / Rearrange(逆にする・並べ替える)。文字の割り当ては資料により少し違う(M を Modify だけにする、R を Reverse だけにする等)。(出典: https://www.designsociety.org/download-publication/35202/CREATIVITY+IN+TRANSACTIONAL+DESIGN+PROBLEMS%3A+NON-INTUITIVE+FINDINGS+OF+AN+EXPERT+STUDY+USING+SCAMPER、https://www.kaonavi.jp/dictionary/osborne_no_checklist/)
  • 土台になった本(Osborn 1953): Alex F. Osborn『Applied Imagination: Principles and Procedures of Creative Thinking』Charles Scribner's Sons、1953年、317ページ(Open Library の版一覧で確認)。改訂版は1957年(379ページ)、第3版は1963年(副題が「…of Creative Problem-Solving」に変わる、417ページ)。(出典: https://openlibrary.org/works/OL161158W)
  • Diehl & Stroebe (1987) は、Osborn が「influential book(影響力の大きい本)」(1957年版を引用)でブレインストーミングを集団の問題解決法として提案した、と書いている。ブレインストーミングを「最初に考えた」と示す一次資料は今回確認していない。(出典: https://homepages.se.edu/cvonbergen/files/2013/01/Productivity-Loss-In-Brainstorming_Toward-the-Solution-of-a-Riddle.pdf)
  • チェックリストの中身: ケンブリッジ大学工学部(IfM)のページは「Osborn's checklist」として、Other uses / Adapt / Modify / Magnify / Minify / Substitute / Rearrange / Reverse / Combine の9つの問いを挙げ、「SCAMPER と呼ばれることもある」と書く。出典として挙げているのは1957年版。(出典: https://www.ifm.eng.cam.ac.uk/research/dmg/tools-and-techniques/osborns-checklist/)
  • 1953年の初版にこのチェックリストが載っていたか、何問あったか(「約70問」「75問」などの説がある)、日本で言う「9項目」が Osborn 自身の分け方かは、本の本文を開けておらず未確認。(出典URL: 未確認)
  • 邦訳: A.F.オズボーン『独創力を伸ばせ』上野一郎訳、ダイヤモンド社、1958年(344ページ、国立国会図書館の書誌で確認)。1982年の新装版は原書第3版の訳と書誌に明記。(出典: https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000000986835、https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001549982)
  • SCAMPER という名前(Eberle 1971): Robert F.(Bob)Eberle『Scamper: Games for Imagination Development』D.O.K. Publishers、1971年6月(Open Library の書誌で、著者・1971年・出版社 "Dok Pub"・ISBN 0914634046 を確認)。子ども向けの想像力ゲームの本。(出典: https://openlibrary.org/works/OL9627042W)
  • 同じ著者の論文: Robert F. Eberle (1972)「Developing Imagination Through Scamper」*The Journal of Creative Behavior* 6(3), 199-203(DOI の登録情報で書誌を確認。出版社ページは403で開けず、論文本文は未確認)。(出典: https://doi.org/10.1002/j.2162-6057.1972.tb00929.x)
  • 現在手に入る版: 『Scamper: Creative Games and Activities for Imagination Development』Combined edition(小学2年〜中学2年向け)、Prufrock Press、2008年。もとの『Scamper』と続編『Scamper On』の活動を1冊にまとめたもの。(出典: https://www.routledge.com/Scamper-Creative-Games-and-Activities-for-Imagination-Development-Com/Eberle/p/book/9781593633462)
  • Wikipedia(英語版)は「Eberle は Osborn の『Applied Imagination』のチェックリストに着想を得た」「Frank E. Williams らの技法にも影響を受けた」と書くが、Williams の部分には出典が付いておらず未確認。Eberle 自身が本の中で Osborn をどう書いているかも未確認。(出典: https://en.wikipedia.org/wiki/SCAMPER)
  • 原典の主張(自分の言葉で): ゼロから「何か良い案を」と考えると、人は同じような案ばかり出しがち。そこで「代えたら?」「組み合わせたら?」「なくしたら?」と決まった問いを1つずつ当てて、考える方向を強制的に変える。Eberle の本は、これを子どもの想像力を育てる遊びとして組み立てたもの。(出典: https://www.routledge.com/Scamper-Creative-Games-and-Activities-for-Imagination-Development-Com/Eberle/p/book/9781593633462、https://www.ifm.eng.cam.ac.uk/research/dmg/tools-and-techniques/osborns-checklist/)
  • 整理: 「Osborn の問いのリスト(1950年代)を、Eberle が覚えやすい7文字の頭字語にまとめて子ども向けの本にした(1971年)」と書くのが、確認できた範囲で安全。「Eberle が考案した発想法」と言い切ると、問いの中身の多くが Osborn 由来である点が消える。

出典

  1. https://openlibrary.org/works/OL161158W
  2. https://openlibrary.org/works/OL9627042W
  3. https://doi.org/10.1002/j.2162-6057.1972.tb00929.x
  4. https://en.wikipedia.org/wiki/SCAMPER
  5. https://www.routledge.com/Scamper-Creative-Games-and-Activities-for-Imagination-Development-Com/Eberle/p/book/9781593633462
  6. https://www.ifm.eng.cam.ac.uk/research/dmg/tools-and-techniques/osborns-checklist/
  7. https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000000986835
  8. https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001549982
  9. https://homepages.se.edu/cvonbergen/files/2013/01/Productivity-Loss-In-Brainstorming_Toward-the-Solution-of-a-Riddle.pdf
  10. https://repository.essex.ac.uk/34344/1/CreativityEnhancementMethods_accepted.pdf
  11. https://doi.org/10.1037/aca0000557
  12. https://openaccess.ahievran.edu.tr/items/e3048ce3-a992-456e-a419-291efae90d2f
  13. https://acikerisim.bartin.edu.tr/entities/publication/0b882eaf-5e7d-4daf-a5e9-87ce5413929a
  14. https://doi.org/10.1080/02635143.2025.2575910
  15. https://www.designsociety.org/download-publication/35202/CREATIVITY+IN+TRANSACTIONAL+DESIGN+PROBLEMS%3A+NON-INTUITIVE+FINDINGS+OF+AN+EXPERT+STUDY+USING+SCAMPER
  16. https://perfilesycapacidades.javeriana.edu.co/en/publications/influence-of-the-type-of-idea-generation-method-on-the-creativity/
  17. https://doi.org/10.1007/s00163-012-0134-0
  18. https://cris.utoronto.ca/facilitation-toolkit/scamper/
  19. https://www.kaonavi.jp/dictionary/osborne_no_checklist/

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