SBIフィードバック(Situation-Behavior-Impact)
まず知る
- SBI は、Situation(いつ・どこで)→ Behavior(見たこと・聞いたこと)→ Impact(それで何が起きたか、自分がどう感じたか)の順に伝えるフィードバックの型。米国の Center for Creative Leadership(CCL)の手法で、同機関の商標。(出典: https://www.ccl.org/articles/leading-effectively-articles/closing-the-gap-between-intent-vs-impact-sbii/)
- 考案年ははっきりしない。確認できた最古の出版物は2000年の CCL の小冊子『Feedback That Works』。(出典: https://www.ccl.org/wp-content/uploads/2019/06/Feedback-That-Works-2E-Promo-Package.pdf、https://openlibrary.org/search.json?q=feedback+that+works+weitzel)
- CCL は今は4つ目として「Intent(そのとき何を狙っていたか)を尋ねる」を足した SBII を勧めている。伝えっぱなしにしないことが大事。(出典: https://www.ccl.org/articles/leading-effectively-articles/closing-the-gap-between-intent-vs-impact-sbii/)
- 根拠は中〜弱。「人格ではなく行動を伝える」はフィードバック研究と整合するが、SBI という型そのものを比べた実験はほぼ無い。フィードバックの3分の1以上はかえって成績を下げた、というメタ分析もある。(出典: https://cris.huji.ac.il/en/publications/the-effects-of-feedback-interventions-on-performance-a-historical/)
- ほめるときにも使える。「何がよかったか」を具体的に言うと、相手が再現しやすい。
根拠の強さと限界
評価: 中〜弱(考え方はフィードバック研究と整合するが、SBI という型そのものの検証はほぼ見つからない)。
- CCL の主張: 公式記事に「SBI はフィードバックを伝える側の不安と、受け手の防御的な反応を減らす」「フィードバックが多い管理職ほど部下から有能と評価される」とあるが、サンプル数・数値・論文の出典は書かれていない(開いて確認)。研究者として Gentry・Young(CCL の元研究者)の名がある。参考文献の CCL ホワイトペーパー(Gentry & Young 2017)は未確認。(出典: https://www.ccl.org/articles/leading-effectively-articles/closing-the-gap-between-intent-vs-impact-sbii/、https://www.ccl.org/articles/leading-effectively-articles/sbi-feedback-model-a-quick-win-to-improve-talent-conversations-development/)
- 土台になる研究: Kluger & DeNisi (1996) *Psychological Bulletin* 119(2), 254-284。607の効果量・23,663人のメタ分析で、フィードバックは平均して成績を上げる(d=0.41)が、3分の1以上はかえって成績を下げた。注意が課題から「自分自身」に向くほど効果が落ちる、という理論を提案(ヘブライ大学の書誌ページで要旨を確認)。人格ではなく行動に焦点を当てる SBI の考え方と整合する。ただしこの研究は SBI を検証したものではない。(出典: https://cris.huji.ac.il/en/publications/the-effects-of-feedback-interventions-on-performance-a-historical/)
- SBI そのものの検証: 米 Rowan 大学の医学生向け1時間の SBI ワークショップの学会抄録(2025年)を確認。受講後に知識やフィードバック能力が「有意に改善」とあるが、対照群・人数・統計値の記載は無い。ランダム化比較試験やメタ分析は見つからなかった。(出典: https://rdw.rowan.edu/stratford_research_day/2025/may1/11)
- 限界: 型を守っても、関係が悪い・頻度が低い・意図を聞かない、では効かない可能性がある。CCL 自身が Intent を足しているのは、SBI 単独の限界を認めたものと読める。(出典: https://www.ccl.org/articles/leading-effectively-articles/closing-the-gap-between-intent-vs-impact-sbii/)
使われた例(組織自身の公表と、研究・参考・手引きを分けて)
① 組織自身が使ったと公表した例(数えるのはここだけ)
- RPM International(米国の製造業、約17,300人)【公表者は研修を売った CCL(販売元の事例紹介)で、RPM 自身の発表ではない。効果の証拠にはしない】/2020年開始/https://www.ccl.org/client-successes/case-studies/rpm-international-builds-a-culture-of-feedback/ /CCL の「Better Conversations Every Day」研修(SBI を中核ツールに含む)を社内講師で展開。8時間の研修を年に数回。/結果: 1,267人が受講、「聞く力が上がった」98% など。数値はすべて受講者アンケートの自己評価で、比較群や業績データは無い。しかも公表者は研修を売った CCL であり、RPM 自身の発表ではない(社員の発言の引用はある)。
- 日本の事例: 組織が自社で SBI を使っていると公言した公式資料は、官公庁・自治体・企業のいずれも検索で見つけられなかった(未確認)。
② 研究・評価として公表された試行/研究報告における実施例
- なし(確認できた範囲で)。
③ 近縁実践・参考例(原典との対応未確認)
- 個人の実践の感想(組織の公表ではない): ウェブ・動画制作の小さな会社(BrandBuddy合同会社)の代表者ブログ(2024年8月、https://blog.brandbuddyz.com/sbi-model )で、「まだ実践中だが、意識するだけでスタッフとのコミュニケーションが変わってきた」という個人の感想のみ。会社としての制度ではなく、数値も無い。
④ 手引き・解説(使用実績ではない)
- (採用方針・使用実績の公表ではない) GitLab(全社の People Group ハンドブック)/2025年(ページの最終更新 2025-10-21)/https://handbook.gitlab.com/handbook/people-group/guidance-on-feedback/ /フィードバックの渡し方の指針として「S-B-I モデルを使う」と掲載。Situation=時と場所を特定、Behavior=観察できる行動、Impact=相手の行動が自分や他者の経験・考えにどう影響したか。/結果: 効果の数値は無い。CCL への帰属表示も無い。
- アラバマ大学バーミンガム校(UAB)人事部 Learning & Development(職員向けの手引き・使用実績の公表ではない)/年は未確認/https://www.uab.edu/humanresources/home/images/LearnDev/PerformanceMgmt/_Tools.Learning.STAFF/Feedback_Model_SBI.pdf /職員の業績管理ツールとして SBI の手順と例文を配布。「SBI は一方通行なので、意図を尋ねると双方向になる」と明記。/結果: 記載なし。
- 日本語の解説記事(カオナビ、マネーフォワード、ClickUp 等)は多いが、いずれも解説であって利用の公表ではない。
まとめ: 組織自身が使ったと公表した例は RPM International の1件だけで、それも販売元 CCL の事例紹介(RPM 自身の発表ではない)。GitLab のハンドブックと UAB 人事部のツールは、SBI を使うよう書いた方針・手引きで、使った実績の公表ではないため④に置いた。
うまくいかなかった例と批判
- CCL 自身が「SBI だけでは一方通行」として Intent を足した SBII を勧めている(公式記事)。UAB の資料も同じ趣旨を書いている。(出典: https://www.ccl.org/articles/leading-effectively-articles/closing-the-gap-between-intent-vs-impact-sbii/、https://www.uab.edu/humanresources/home/images/LearnDev/PerformanceMgmt/_Tools.Learning.STAFF/Feedback_Model_SBI.pdf)
- Kluger & DeNisi (1996) は、フィードバック全般について「3分の1以上は成績を下げる」と報告しており、「型どおりに伝えれば効く」とは言えないことの根拠になる。(出典: https://cris.huji.ac.il/en/publications/the-effects-of-feedback-interventions-on-performance-a-historical/)
- 「SBI をやめた」と公言する組織は見つからなかった。
原典を読む
- 原典: Sloan R. Weitzel『Feedback That Works: How to Build and Deliver Your Message』CCL Press、初版2000年、第2版2019年(ISBN 978-1-60491-921-9)。CCL の小冊子で、英語。
- 邦訳: 見つけられなかった(未確認)。
- 関連の古典: Kluger & DeNisi (1996)「The effects of feedback interventions on performance」*Psychological Bulletin*(英語論文)。フィードバックが逆効果になる条件を知るのに役立つ。
原典で確かめたこと
- 提唱者: 米国の研修・研究機関 Center for Creative Leadership(CCL、1970年設立)。CCL の公式記事は SBI を「our research-based, widely-recognized method」と呼び、SBI に商標記号(™)を付けている(ccl.org の記事2本を開いて確認)。特定の考案者の個人名は、CCL のページには出てこない。(出典: https://www.ccl.org/articles/leading-effectively-articles/sbi-feedback-model-a-quick-win-to-improve-talent-conversations-development/、https://www.ccl.org/articles/leading-effectively-articles/closing-the-gap-between-intent-vs-impact-sbii/)
- 年: CCL の公式ページには、SBI がいつ作られたかの記載が無い。確認できた最も古い一次資料は、CCL Press の小冊子 Sloan R. Weitzel『Feedback That Works: How to Build and Deliver Your Message』初版2000年(第2版2019年)。第2版の見本 PDF(ccl.org)の奥付「First edition published 2000. Second edition 2019.」と目次「The SBI Feedback Method」で確認し、著者名と初版年は Open Library の書誌で確認した。(出典: https://www.ccl.org/wp-content/uploads/2019/06/Feedback-That-Works-2E-Promo-Package.pdf、https://openlibrary.org/search.json?q=feedback+that+works+weitzel)
- それ以前の可能性: 同じ見本 PDF の参考文献に CCL の小冊子『Ongoing Feedback』(Kirkland & Manoogian, 1998)、『Giving Feedback to Subordinates』(Buron & McDonald-Mann, 1999)があるが、これらに SBI が載っているかは未確認。したがって公開ページでは「遅くとも2000年には CCL の出版物に載っていた」としか書けない。(出典: https://www.ccl.org/wp-content/uploads/2019/06/Feedback-That-Works-2E-Promo-Package.pdf)
- 原典の主張(自分の言葉で): 「いいリーダーだね」「もっと戦略的に」のような言葉は評価や解釈であって、相手が何を繰り返せば(やめれば)よいか分からない。いつ・どこで(Situation)、何をしたか(Behavior)、それがどう影響したか(Impact)を具体的に伝えれば、相手は行動を続けるか、始めるか、やめるかを判断しやすくなる。責めず、決めつけず、感情的にならずに伝えられる、という主張(第2版の冒頭章)。(出典: https://www.ccl.org/wp-content/uploads/2019/06/Feedback-That-Works-2E-Promo-Package.pdf)
- CCL 自身の拡張(SBII): CCL は4つ目のステップとして「Intent(意図)を尋ねる」を足した SBII を勧めている(2025年8月の公式記事で確認)。SBI だけだと一方通行になるので、「何を狙っていたの?」と聞いて、意図と影響のずれを一緒に探る、という位置づけ。(出典: https://www.ccl.org/articles/leading-effectively-articles/closing-the-gap-between-intent-vs-impact-sbii/)
出典
- https://www.ccl.org/articles/leading-effectively-articles/closing-the-gap-between-intent-vs-impact-sbii/
- https://www.ccl.org/articles/leading-effectively-articles/sbi-feedback-model-a-quick-win-to-improve-talent-conversations-development/
- https://www.ccl.org/wp-content/uploads/2019/06/Feedback-That-Works-2E-Promo-Package.pdf
- https://www.ccl.org/client-successes/case-studies/rpm-international-builds-a-culture-of-feedback/
- https://openlibrary.org/search.json?q=feedback+that+works+weitzel
- https://cris.huji.ac.il/en/publications/the-effects-of-feedback-interventions-on-performance-a-historical/
- https://rdw.rowan.edu/stratford_research_day/2025/may1/11
- https://handbook.gitlab.com/handbook/people-group/guidance-on-feedback/
- https://www.uab.edu/humanresources/home/images/LearnDev/PerformanceMgmt/_Tools.Learning.STAFF/Feedback_Model_SBI.pdf
- https://blog.brandbuddyz.com/sbi-model
記入テンプレを準備しています
このフレームワークを、仕事の場面でそのまま使えるシートにまとめています。欲しいものを1つ選んでください。
ありがとうございます。準備ができたら、このサイトでお知らせします。
試作中のため、選んだ結果はこの端末の中だけに記録されます。外部には送られません。