ペルソナ(Persona)
まず知る
- ペルソナは、調べた利用者を「名前・目的・技能を持つ架空の1人」にまとめ、「この人なら何をしたいか」で設計や企画を決める方法。米国の Alan Cooper が1999年の著書で設計の道具として紹介した。(出典: https://openlibrary.org/works/OL58154W)
- Cooper 本人によれば、1983年のソフト開発で原始的な形を使い、1995年に3人のペルソナ(Chuck・Cynthia・Rob)で今の形になった。本人も「似たものは先人やマーケティングでも使われていた」と書いており、「Cooper が発明した」とは言えない。(出典: https://web.archive.org/web/20080801213038/www.cooper.com/journal/2003/08/the_origin_of_personas.html)
- 根拠は「弱〜中」。チーム内で利用者像を共有するのに使われているという報告は多いが、ペルソナを使うと製品が良くなると比べて示した研究は見つからなかった(未確認)。経験ある実務家14人の聞き取りでは「伝達には使うが、設計にはほぼ使わない」という結果だった。(出典: https://groups.cs.umass.edu/nmahyar/wp-content/uploads/sites/8/2019/01/reading15-optional2.pdf)
- 「ペルソナは検証も反証もできない」という批判がある。属性を盛るほど、当てはまる実在の人は急に減る。(出典: https://doi.org/10.1177/154193120605000503、https://doi.org/10.1177/154193120805201602)
- 想像や写真で作ると、決めつけ(ステレオタイプ)を強めるおそれがある。実際の聞き取りやデータから作り、関係の無い属性は書かない。(出典: https://doi.org/10.1145/2858036.2858151、https://doi.org/10.1145/3025453.3025609)
- 英国の政府デジタルサービス(GDS)、米国 USAGov、英国 Companies House は、ペルソナを使ったことを自らのブログで公表している。ただし効果の数値は出しておらず、GDS は「実際の利用者とのテストの代わりにはならない」と明記している。(出典: https://assisteddigital.blog.gov.uk/2014/08/28/assisted-digital-user-personas/、https://accessibility.blog.gov.uk/2019/02/11/using-persona-profiles-to-test-accessibility/、https://cms.usa.gov/blog/2015/10/using-personas-to-better-understand-our-customers-primary-tasks、https://companieshouse.blog.gov.uk/2018/11/05/personas-why-and-how-we-use-them-part-1/)
- 作りすぎに注意。Companies House は最初16人作って「多すぎた」と振り返り、数を絞り直した。(出典: https://companieshouse.blog.gov.uk/2018/11/05/personas-why-and-how-we-use-them-part-1/)
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根拠の強さと限界
評価: 弱〜中(チーム内で利用者像を共有するのに役立つという実務報告や、小さな実験での支持はある。しかし「ペルソナを使うと製品やサービスが良くなる」と比べて示した研究はほとんどなく、作り方によって中身が大きく変わる。正しさを確かめにくいという方法上の批判もある)。
支持側・肯定的な研究
- Salminen ほか (2020) CHI 2020、DOI 10.1145/3313831.3376770。34人の実験で、同じ利用者データを「ペルソナの画面」と「分析ツールの画面」で見せ、利用者を見分ける課題をさせた。ペルソナのほうが速く、正確さも有意に高かった。一方で、分析ツールにしかできない気づきもあった(要旨で確認)。要旨自身が「ペルソナを他の方法と比べた厳密な実証研究が不足している」と書いている。(出典: https://doi.org/10.1145/3313831.3376770)
- 注意: 実験室での短い課題で、実際の製品の出来を測ったものではない。著者はデータからペルソナを自動で作る仕組みを研究・開発しているグループ。
- Nielsen & Hansen (2014) CHI 2014。デンマークの13社・28人への聞き取り。先行研究とは逆に「ペルソナは既存の仕事の進め方によく組み込まれ、設計に使われていた」「多くの会社が満足または非常に満足」と報告。ただし「多くの会社で、成功の前に何度かの失敗があった」とも書く(論文 PDF を開いて確認)。満足度は聞き取りによる自己申告。(出典: https://groups.cs.umass.edu/nmahyar/wp-content/uploads/sites/8/2019/01/reading15-optional1.pdf)
- Pruitt & Grudin (2003) DUX 2003(Microsoft の社員による報告)。チームの関心が利用者に向いた、テスト担当が「正しい種類の問題」を見つけられると感じた、などの利点を挙げるが、「ペルソナの効果を正式に測ろうとはしていない」と本人たちが書いている。(出典: https://www.microsoft.com/en-us/research/wp-content/uploads/2017/03/pruitt-grudinold.pdf)
批判側・否定的な研究
- Chapman & Milham (2006)「The Personas' New Clothes: Methodological and Practical Arguments against a Popular Method」*Proceedings of the Human Factors and Ergonomics Society Annual Meeting* 50, 634-636(著者はいずれも Microsoft 所属。Crossref の書誌と要旨で確認)。(出典: https://doi.org/10.1177/154193120605000503)
- 1人のペルソナが何人の実在の利用者を表しているのか分からない。
- 「ペルソナは十分に検証も反証もできないので、妥当性を示せない」。
- 社内の力関係の争いを招き、データで決着をつける力を弱めるおそれがある。
- 方法上の問題が解決するまで、ペルソナを「データを伝える手段」と考えないほうがよい、と結論。
- Chapman, Love, Milham, ElRif & Alford (2008) 同誌 52, 1107-1111。6つの調査データ(268〜10,307人)で、ランダムに作ったペルソナ風の説明1万件ずつについて「当てはまる人の割合」を数えた。属性(年齢・職業・習慣など)を書き足すほど、当てはまる人の割合は急に減った。「多くの属性を持つ説明はごく少数の人しか表さない可能性が高い。実在の集団を表すと考える前に、データで確かめるべき」と提案(Crossref の要旨で確認)。(出典: https://doi.org/10.1177/154193120805201602)
- Matthews, Judge & Whittaker (2012) CHI 2012, 1219-1228。ペルソナを使った経験のある実務家14人(設計者10人、UX専門家4人)への聞き取り。ペルソナは「ほぼ伝達のためだけに使われ、設計には使われていなかった」。参加者はペルソナを「抽象的、人間味がない、誤解を招く、気が散る」と感じていた。「ペルソナは実際の利用者データに浸ることの代わりにはならない」と結論(論文 PDF を開いて確認)。(出典: https://groups.cs.umass.edu/nmahyar/wp-content/uploads/sites/8/2019/01/reading15-optional2.pdf)
- Friess (2012) CHI 2012, 1209-1218。一流のデザイン会社(社名は要旨に無い)の意思決定会議を観察。設計者はペルソナの調査・作成に多くの時間をかけていたが、決める場面の会話にペルソナが出てくることは「比較的少なく」、もっと設計者中心のあいまいな言い方で説得していた(OpenAlex 収録の要旨で確認。回数や割合の数値は未確認)。(出典: https://doi.org/10.1145/2207676.2208572)
データ駆動ペルソナ(Salminen らの研究)
- Salminen, Guan, Jung & Jansen (2021) *International Journal of Human-Computer Interaction* 37, 1685-1708。2005〜2020年のデータ駆動ペルソナ研究77本をまとめた。残る課題として「共有できる資源」「評価方法」「標準化」「多様な人への配慮」「深い利用者理解を失うリスク」を挙げる(要旨で確認)。つまり、作り方の研究は進んだが、評価方法は課題のまま。(出典: https://doi.org/10.1080/10447318.2021.1908670)
- Salminen, Wenyun Guan, Jung & Jansen (2022) CHI 2022。ペルソナを実際に使った95本の論文を調べ、「ペルソナの使い方をまとめた先行レビューは見つからなかった」と書く。多い分野はソフトウェア開発・医療・高等教育(要旨で確認)。(出典: https://doi.org/10.1145/3491102.3517589)
- Salminen ほか (2022) *Big Data* 10, 313-336。あるグローバルな報道機関の動画視聴3.63億回分のデータで、ペルソナを作るアルゴリズムを比べた。多様性が高いアルゴリズムほど公平性が低い傾向(スピアマン相関 −0.83)。「どのアルゴリズムを選ぶかで、ペルソナの年齢・性別などの姿が変わり、意思決定者の見方に影響する」(要旨で確認)。(出典: https://doi.org/10.1089/big.2021.0177)
ステレオタイプ(決めつけ)の批判
- Marsden & Haag (2016) CHI 2016。ペルソナは「既存のステレオタイプを再び書き込み」、利用者中心ではなく作り手自身を基準にする方法になる危険がある、と論点を整理し、ユーザビリティ専門家への聞き取りを行った(OpenAlex 収録の要旨で確認)。(出典: https://doi.org/10.1145/2858036.2858151)
- Hill ほか (2017) CHI 2017。1人のペルソナに男女複数の写真を付けると、関心を下げずに複数の性別を考えるよう促せた、という実験室・視線計測の研究(要旨で確認)。(出典: https://doi.org/10.1145/3025453.3025609)
- Pröbster, Hermann & Marsden (2019) Mensch und Computer 2019。情報科学の学生93人の視線計測実験。写真の種類(肌の色の違う女性の写真、絵、なし)で受け取り方が変わり、絵などで決めつけを「いくらか減らせる可能性」がある、と報告(要旨で確認)。(出典: https://doi.org/10.1145/3340764.3340771)
- Turner & Turner (2011)「Is stereotyping inevitable when designing with personas?」*Design Studies* 32, 30-44。題名と書誌のみ確認、要旨・本文は開けず内容は未確認。(出典: https://doi.org/10.1016/j.destud.2010.06.002)
まとめ(両論)
- 一致している点: ペルソナはチーム内の「伝達」には使われている。作り方(実データに基づくか、属性を盛りすぎていないか、写真の選び方)で質が大きく変わる。
- 割れている点: 「設計の判断にも役立つ」(Nielsen & Hansen、Salminen 2020)と見るか、「伝達には使われても設計にはほとんど使われず、検証もできない」(Chapman & Milham、Matthews ほか、Friess)と見るか。
- 製品・サービスの成果(売上・使いやすさ・満足度)が良くなったことを、ペルソナを使わない場合と比べて示した研究は、今回見つけられなかった(未確認)。(出典URL: 未確認)
- 「具体的な人物のほうが共感しやすい」という心理学的な説明(Grudin 2006「Why Personas Work: The Psychological Evidence」など)は書誌のみ確認、本文は開いておらず未確認。(出典URL: 未確認)
使われた例(組織自身の公表と、研究・参考・手引きを分けて)
① 組織自身が使ったと公表した例(数えるのはここだけ)
- 英国政府デジタルサービス(GDS)・Assisted Digital チーム/2014年8月28日/GOV.UK 公式ブログ(筆者 Angela Collins Rees)/デジタル行政サービスを使うのに助けが必要な市民を表す8人のペルソナ(うち1人は支援する側)を作成。市民・ボランティア団体・自治体への72件の聞き取りと、ONS・Ofcom などの統計を元にした。各省庁とのワークショップで、ペルソナの切り抜きを支援モデルの図に置いて利用の流れを考えた。(出典: https://assisteddigital.blog.gov.uk/2014/08/28/assisted-digital-user-personas/)/結果: 「関心を引き、共感をもって説明するのに役立った」という本人たちの感想のみ。数値の効果は無い。Cooper への言及は無い。
- 英国政府デジタルサービス(GDS)・アクセシビリティ・チーム/2019年2月11日/政府公式ブログ(筆者 Anika Henke)/2017年に、障害や特性(読字障害、自閉スペクトラムなど)ごとのアクセシビリティ・ペルソナを作成。7人分のログイン環境を用意し、チームの人がペルソナになって50分間タスクをこなし、問題を記録する「ペルソナ・テスト」を行った。(出典: https://accessibility.blog.gov.uk/2019/02/11/using-persona-profiles-to-test-accessibility/)/結果: 「開発の早い段階で問題を見つける、効果的で参加しやすい方法」と本人たちは書くが、数値は無い。「実際の利用者とのテストの代わりにはならない」「模擬は障害の本当の姿ではない」と明記している。
- 米国 USAGov(連邦政府の総合案内)/2015年10月2日/USAGov 公式ブログ(筆者は同チームのユーザビリティ担当リーダー Michelle Chronister)/USA.gov と電話窓口の利用者について、情報の探し方で分けた4人のペルソナを約2週間で作成。2014年のアクセス解析・サイト内検索・満足度調査・窓口の利用データなどを使い、引用文は実際の利用者の声から取った。(出典: https://cms.usa.gov/blog/2015/10/using-personas-to-better-understand-our-customers-primary-tasks)/結果: 効果の数値は無い。今後、ジャーニーマップ作りや年1回の見直しに使う予定と書く段階。
- 英国 Companies House(会社登記を扱う政府機関)【公式ブログへの外部寄稿。効果の証拠ではない】/2018年11月5日・7日/Companies House 公式ブログ(筆者は外部のデザイン会社 The Satori Lab 共同創業者 Jo Carter。Companies House のリード・ユーザーリサーチャー Mark Hulett の発言を引用)/2014年に組織全体のペルソナを作り、最初は12人の予定が16人になり「多すぎた」と振り返る。のちに「デジタルの得意さ」と「登記の知識」の2軸で整理した。(出典: https://companieshouse.blog.gov.uk/2018/11/05/personas-why-and-how-we-use-them-part-1/)PowerPoint で作り共有フォルダで管理し、少なくとも年1回の見直しを勧める。(出典: https://companieshouse.blog.gov.uk/2018/11/07/personas-why-and-how-we-use-them-part-2/)/結果: 利用者調査で「つまずきの原因はデジタルの苦手さではなく知識不足」と分かり、内容と画面の説明を直したことが「デジタルサービスの利用増につながった」と書くが、数値は無く、ペルソナ自体の効果か、利用者調査と改善の効果かは切り分けられていない。
- 補足: 同ブログは「GDS のサービス評価に通るには、実際の利用者調査に基づくペルソナを作ったことを示す必要がある」と書くが、GDS のサービス基準の原文は開いておらず未確認。(出典: https://companieshouse.blog.gov.uk/2018/11/07/personas-why-and-how-we-use-them-part-2/)
- 日本の事例: 官公庁や企業が自らペルソナを使ったと公表した一次資料は、今回の検索では見つけられなかった(なし)。デジタル庁の資料に「利用者のニーズから出発する」などの原則はあるが、ペルソナの作成・公表は確認できなかった。(出典URL: 未確認)
② 研究・評価として公表された試行/研究報告における実施例(組織名非公表・前後比較。実施は効果の証明ではない)
- Microsoft 社内の製品チーム(製品名は論文に無い)/Pruitt & Grudin「Personas: Practice and Theory」DUX 2003(Microsoft Research のサイトで PDF を確認)/3年以上の利用経験。最大の取り組みは22人・約2か月で6人のペルソナを作成。ペルソナに合う5,000人の利用者パネルを外部会社に作り、定期的に意見を聞いた。(出典: https://www.microsoft.com/en-us/research/wp-content/uploads/2017/03/pruitt-grudinold.pdf)/結果: 「正式には効果を測っていない」と著者が明記。社内初期の試みは「データに基づかず信じてもらえない」「どう使うか分からない」などの問題を抱えていたとも書く。社員による報告で、外部評価ではない。
- 一流のデザイン会社(社名非公表)/Friess (2012) CHI 2012/意思決定会議の会話分析。ペルソナ作りに時間をかけても、決める場面ではペルソナがあまり話題に出なかった(要旨で確認)。(出典: https://doi.org/10.1145/2207676.2208572)
- ソフトウェア企業の実務家14人(会社名非公表)/Matthews ほか (2012) CHI 2012/ペルソナは主に伝達用で、設計にはほぼ使われていなかった。(出典: https://groups.cs.umass.edu/nmahyar/wp-content/uploads/sites/8/2019/01/reading15-optional2.pdf)
- デンマークの13社(官民、社名は論文の分析対象として扱われ、ここでは挙げない)/Nielsen & Hansen (2014) CHI 2014/28人への聞き取りで、設計への組み込みと満足を報告。満足は自己申告。(出典: https://groups.cs.umass.edu/nmahyar/wp-content/uploads/sites/8/2019/01/reading15-optional1.pdf)
③ 近縁実践・参考例(原典との対応未確認・事例には数えない)
- Microsoft の「user archetypes」(1995年ごろ〜): Pruitt & Grudin によれば、ある製品チームで製品企画・マーケティング向けに始まり、Cooper よりも Geoffrey Moore の「ターゲット顧客の描写」に近い方法だった。Cooper の型とは別系統の可能性がある。(出典: https://www.microsoft.com/en-us/research/wp-content/uploads/2017/03/pruitt-grudinold.pdf)
- マーケティングの「顧客像」: Cooper 本人も Pruitt & Grudin も「マーケティングで似たものが使われてきた」と書くが、具体的な始まりや資料は未確認。(出典: https://web.archive.org/web/20080801213038/www.cooper.com/journal/2003/08/the_origin_of_personas.html)
④ 手引き・解説(使用実績ではない)
- ペルソナの作り方を解説するデザインツール会社・研修会社・マーケティング会社の記事は日本語・英語とも非常に多いが、いずれも解説や宣伝で、組織の使用実績の公表ではない。(出典URL: 未確認)
- Cooper 本人は2003年の時点で「ペルソナの完全な手引き書はまだ書かれていない」と述べていた。(出典: https://web.archive.org/web/20080801213038/www.cooper.com/journal/2003/08/the_origin_of_personas.html)
まとめ: 組織自身の公表例は4件(英国 GDS の2チーム、米国 USAGov、英国 Companies House。すべて政府機関の公式ブログ)。どれも効果の数値は無く、Cooper の名前にも触れていない。研究報告における実施例は4件(Microsoft 社内、匿名のデザイン会社、匿名の実務家14人、デンマーク13社)。日本で組織が自ら公表した例は「なし」。
うまくいかなかった例と批判
- 「検証も反証もできない」: Chapman & Milham (2006) は、ペルソナが何人を表すか分からず妥当性を示せない、社内の力関係の争いを招く、と批判(著者は Microsoft の社員)。(出典: https://doi.org/10.1177/154193120605000503)
- 属性を盛るほど実在しにくくなる: Chapman ほか (2008) は、属性を足すほど当てはまる人の割合が急に減ることを、6つの調査データで示した。(出典: https://doi.org/10.1177/154193120805201602)
- 設計には使われていない: Matthews ほか (2012) は、経験ある実務家がペルソナを「抽象的、人間味がない、誤解を招く、気が散る」と感じ、伝達にしか使っていなかったと報告。(出典: https://groups.cs.umass.edu/nmahyar/wp-content/uploads/sites/8/2019/01/reading15-optional2.pdf)
- Microsoft 社内の初期の失敗: Pruitt & Grudin (2003) は、社内の初期のペルソナ的な試みが「委員会で作られたようでデータに基づかず信じてもらえない」「履歴書のような紙をポスターにして貼るだけ」「使い方が分からない」「上からの支援が無い」の4つの問題を抱えていたと書く。また、ペルソナを他の利用者調査や評価の代わりにしてしまう「ペルソナ・マニア」を危険として挙げる。(出典: https://www.microsoft.com/en-us/research/wp-content/uploads/2017/03/pruitt-grudinold.pdf)
- Companies House「16人は多すぎた」: 政府機関自身のブログで、最初に作りすぎたことを振り返っている。また、趣味・婚姻状況などの生活情報や長い物語は役に立たなかったと書く。(出典: https://companieshouse.blog.gov.uk/2018/11/05/personas-why-and-how-we-use-them-part-1/)
- ステレオタイプの再生産: Marsden & Haag (2016) は、ペルソナが既存のステレオタイプを再び書き込む危険を指摘。(出典: https://doi.org/10.1145/2858036.2858151)データから自動で作る場合も、アルゴリズムの選び方でペルソナの年齢・性別の姿が変わる(Salminen ほか 2022)。(出典: https://doi.org/10.1089/big.2021.0177)
- 「ペルソナをやめた」と公言した組織は見つからなかった。
原典を読む
- 原典: Alan Cooper『The Inmates Are Running the Asylum』Sams、1999年(2004年版あり)。英語。ペルソナの説明は1章分。(出典: https://openlibrary.org/works/OL58154W、https://web.archive.org/web/20080801213038/www.cooper.com/journal/2003/08/the_origin_of_personas.html)
- 邦訳: アラン・クーパー『コンピュータは、むずかしすぎて使えない!』翔泳社、473ページ(読書メーターの書誌で確認)。訳者・刊行年・ISBN は書誌ページに表示が無く未確認(検索結果では「2000年刊・山形浩生訳・品切れ」とされるが、ページを開けず未確認)。(出典: https://bookmeter.com/books/458185)
- 由来を知る: Cooper「The Origin of Personas」(2003年、Internet Archive 保存版、無料)。(出典: https://web.archive.org/web/20080801213038/www.cooper.com/journal/2003/08/the_origin_of_personas.html)
- 実務と批判を両方知る: Pruitt & Grudin (2003)(実務側、無料 PDF)と Matthews ほか (2012)(批判側)。(出典: https://www.microsoft.com/en-us/research/wp-content/uploads/2017/03/pruitt-grudinold.pdf、https://groups.cs.umass.edu/nmahyar/wp-content/uploads/sites/8/2019/01/reading15-optional2.pdf)
原典で確かめたこと
- 提唱者: 米国のソフトウェア開発者・設計コンサルタント Alan Cooper。設計やマーケティングで使う「架空の利用者像」を、設計の道具として本に書いた人物。(出典: https://web.archive.org/web/20080801213038/www.cooper.com/journal/2003/08/the_origin_of_personas.html)
- 一般向けの原典: Alan Cooper『The Inmates Are Running the Asylum』Sams、1999年(Open Library の書誌で初版1999年・Sams、ISBN 0672316498 を確認。2004年 Sams 版、2008年 Pearson 電子版あり)。2008年版の副題は「Why High Tech Products Drive Us Crazy and How to Restore the Sanity」。(出典: https://openlibrary.org/works/OL58154W)
- 注意: Cooper 本人の記事では「1998年に出版」と書いている。書誌では1999年。公開ページでは書誌に合わせて「1999年」とし、本人記事との食い違いを注記するのが安全。(出典: https://web.archive.org/web/20080801213038/www.cooper.com/journal/2003/08/the_origin_of_personas.html、https://openlibrary.org/works/OL58154W)
- Cooper は同じ記事で、この本でのペルソナの説明は「1章分」「25ページ」ほどで、本はもともと経営者向けに書いたもので設計者向けの手引き書ではなかった、と述べている。(出典: 同上)
- Cooper 自身が書いた由来(2003年8月1日の自社サイト記事「The Origin of Personas」。現在は Internet Archive の保存版で確認)(出典: https://web.archive.org/web/20080801213038/www.cooper.com/journal/2003/08/the_origin_of_personas.html)
- 1983年: 工程管理ソフト「Plan*It」(のちに Computer Associates から「SuperProject」として発売)を作るとき、7〜8人に話を聞き、特に広告会社の Kathy という女性への聞き取りを元に、頭の中で「Kathy に近い利用者」を演じながら設計した。Cooper はこれを「最初の、原始的なペルソナ」と呼んでいる。
- 1995年: Sagent Technologies という会社の仕事で、見込み客6人ほどに聞き取りをし、目的・作業・技能で3つのグループに分かれることを見つけ、Chuck・Cynthia・Rob の3人の人物にまとめた。Cooper は「最初の本当の、ゴール志向(Goal-Directed)のペルソナ」と書く。設計案をこの3人の目線で説明したら、開発者が納得しやすくなった、と本人は述べる(本人の回想で、比較した記録ではない)。
- 本人も「自分が最初」とは言い切っていない: 「先人の多くは、民族誌的な利用者調査をして、ペルソナに似たものを作ってきた」「マーケティングの専門家も、人口統計の区分を表すためにペルソナに似たものを長く使ってきた」と書いている。そのうえで「ペルソナは独自で、独自に効果的だ」と主張している。
- それ以前・周辺の流れ: Microsoft の Pruitt & Grudin(2003年)は「利用者を抽象化して表す方法はマーケティングから始まった」と書き、自社では1995年ごろから「user archetypes」という名前で似た方法を使っていたと述べる。(出典: https://www.microsoft.com/en-us/research/wp-content/uploads/2017/03/pruitt-grudinold.pdf)マーケティング側でいつ誰が始めたかは今回未確認。(出典URL: 未確認)
- 原典の主張(自分の言葉で): 「すべての利用者のために」と考えると、結局は開発者自身の使い方や、要望を全部足した機能の寄せ集めになる。そこで、調べた利用者を少数の具体的な人物(名前・目的・技能を持つ架空の人)にまとめ、「この人は何をしたいか」で設計を決め、チームに説明する。Cooper は、ペルソナは「すぐ分かるが、使いこなすには数か月〜数年かかる」とも書いている。(出典: https://web.archive.org/web/20080801213038/www.cooper.com/journal/2003/08/the_origin_of_personas.html)
出典
- https://web.archive.org/web/20080801213038/www.cooper.com/journal/2003/08/the_origin_of_personas.html
- https://openlibrary.org/works/OL58154W
- https://bookmeter.com/books/458185
- https://www.microsoft.com/en-us/research/wp-content/uploads/2017/03/pruitt-grudinold.pdf
- https://doi.org/10.1177/154193120605000503
- https://doi.org/10.1177/154193120805201602
- https://groups.cs.umass.edu/nmahyar/wp-content/uploads/sites/8/2019/01/reading15-optional2.pdf
- https://doi.org/10.1145/2207676.2208572
- https://groups.cs.umass.edu/nmahyar/wp-content/uploads/sites/8/2019/01/reading15-optional1.pdf
- https://doi.org/10.1145/3313831.3376770
- https://doi.org/10.1080/10447318.2021.1908670
- https://doi.org/10.1145/3491102.3517589
- https://doi.org/10.1089/big.2021.0177
- https://doi.org/10.1145/2858036.2858151
- https://doi.org/10.1145/3025453.3025609
- https://doi.org/10.1145/3340764.3340771
- https://doi.org/10.1016/j.destud.2010.06.002
- https://assisteddigital.blog.gov.uk/2014/08/28/assisted-digital-user-personas/
- https://accessibility.blog.gov.uk/2019/02/11/using-persona-profiles-to-test-accessibility/
- https://cms.usa.gov/blog/2015/10/using-personas-to-better-understand-our-customers-primary-tasks
- https://companieshouse.blog.gov.uk/2018/11/05/personas-why-and-how-we-use-them-part-1/
- https://companieshouse.blog.gov.uk/2018/11/07/personas-why-and-how-we-use-them-part-2/
記入テンプレを準備しています
このフレームワークを、仕事の場面でそのまま使えるシートにまとめています。欲しいものを1つ選んでください。
ありがとうございます。準備ができたら、このサイトでお知らせします。
試作中のため、選んだ結果はこの端末の中だけに記録されます。外部には送られません。