4P(マーケティング・ミックス)
まず知る
- 4Pは「製品・価格・場所・販促」を一緒に決めるための整理の箱。McCarthy が1960年の教科書で4つにまとめた。(出典: https://archive.org/metadata/basicmarketingma0000mcca_n8s6/metadata)
- 元になった「マーケティング・ミックス」は Borden の言葉で、もともとは12の要素と「市場の力」をセットで考えるものだった。4つに減らしたぶん、顧客や競合の側が見えにくい。(出典: https://www.impactplus.com/hubfs/Borden-1984_The-concept-of-marketing-mix.pdf)
- 根拠は弱い。効く・効かないを試す種類の理論ではなく分類で、その分類にも「項目が重なる」「売り手の内向き」と学術的な批判がある。(出典: https://doi.org/10.1177/002224299205600407、https://research.utwente.nl/en/publications/the-marketing-mix-revisited-towards-the-21st-century-marketing/)
- 使うなら、先に「誰に売るか」を決め、4つが同じ相手に同じ印象を与えているかを確かめる。4C(顧客の価値・負担・手軽さ・対話)で見直すと抜けが見つかりやすい。
- 公的機関の研究報告で支援の手順に組み込まれた例はある(日本政策金融公庫の連載は解説)が、企業が「4Pで成功した」と自ら示した資料は見つからなかった。(出典: https://www.gitc.pref.nagano.lg.jp/reports/pdf/H21/03Kankyo/H21E08_27-30.pdf、https://www.jfc.go.jp/n/finance/sougyou/column/202212/index.html)
根拠の強さと限界
評価: 弱(効果を主張する理論ではなく「打ち手の分類」。分類としての妥当性にも学術的な批判がある)
- 性質: 4Pは「こうすれば売上が上がる」という因果仮説ではなく、マーケティングの決定事項を4つの箱に分ける整理法。したがって「効果の実証」自体がなじみにくい。4Pを使った組織と使わない組織を比べた研究は見つからなかった(網羅検索ではない)。
- 分類としての批判: van Waterschoot & Van den Bulte (1992)「The 4P Classification of the Marketing Mix Revisited」, Journal of Marketing 56(4), 83-93(Crossref で書誌確認、DOI 10.1177/002224299205600407。本文は未開封)。検索結果の要約では、4Pは販促(sales promotion)が「他に入らないもの」という消極的な定義になっていて、項目同士が重なり(相互排他でない)、全体を覆い切れていない(網羅的でない)という批判を扱い、改良した分類を提案している(本文未確認)。(出典: https://doi.org/10.1177/002224299205600407)
- 適用範囲の批判: Constantinides (2006)「The Marketing Mix Revisited: Towards the 21st Century Marketing」, Journal of Marketing Management 22(3-4), 407-438, DOI 10.1362/026725706776861190(トゥウェンテ大学リポジトリで要旨を確認)。消費財・関係性・サービス・小売・産業財・電子マーケティングの6分野の批判を整理し、共通の弱点として「内向き(売り手側の発想)」と「個別対応ができない」の2点を挙げる。(出典: https://research.utwente.nl/en/publications/the-marketing-mix-revisited-towards-the-21st-century-marketing/)
- 擁護材料: 教科書・実務の共通言語として60年以上残っている点は事実(McCarthy の教科書が19版まで続いた)。ただし「普及している」ことは「効く」ことの証拠ではない。(出典: https://en.wikipedia.org/wiki/E._Jerome_McCarthy)
使われた例(組織自身の公表と、研究・参考・手引きを分けて)
① 組織自身が使ったと公表した例(数えるのはここだけ)
- 長野県工業技術総合センター(地域資源製品開発支援センター)/2009年(研究報告 No.4, pp.E27-E30)/「商品・ブランドづくりにおける感性価値創造のための実践的マーケティング手法 −農産加工食品のパッケージデザインを事例として−」長瀬浩明・鈴木進 https://www.gitc.pref.nagano.lg.jp/reports/pdf/H21/03Kankyo/H21E08_27-30.pdf /中小・農産加工事業者の相談支援(同センターには1年で100件余りの相談、3割強が食品分野と記載)のために、4P と、買い手視点の 4C を対にした表を示し、SWOT で出した要因を「商品・価格/コスト・顧客や市場・流通や販売・情報発信」などマーケティング・ミックスの区分で分類する手順をまとめた。/結果: 手法の提案で、成果の数値はない。「手法そのものを検証しつつ改善を図っていく」としている(本文確認)。
- 企業が自社の施策を4Pで組んだと公言した一次資料は、今回の検索では見つからなかった(未確認)。解説記事で「スターバックスの4P」などとされるものは、第三者による当てはめで、本人の公表ではないので採用しない。
② 研究・評価として公表された試行/研究報告における実施例
- なし(確認できた範囲で)。
③ 近縁実践・参考例(原典との対応未確認)
- なし(確認できた範囲で)。
④ 手引き・解説(使用実績ではない)
- 日本政策金融公庫(創業支援サイト START)/2022年12月28日/連載「実現に近づく!創業計画書の作り方」第3回、執筆は日本生産性本部の加藤篤士道氏 https://www.jfc.go.jp/n/finance/sougyou/column/202212/index.html /筆者は「私はいつもマーケティング戦略では4Pというフレームワークを使って表現しています」と述べ、架空の「ドッグ・ガーデン・カフェ」企画を4Pで具体化し、「ターゲットと4つのPの組み合わせがフィットしているか」が最大のポイント、創業後も見直すよう勧める。/結果: 公開された解説・手順であって、特定企業の実施実績ではない。【筆者個人の使い方と架空の企画例の解説で、使用実績ではないため④に置いた】
まとめ: 組織自身が使ったと公表した例は1件(長野県工業技術総合センターの研究報告。手法の提案で成果の数値は無い)。日本政策金融公庫の連載は④(解説)。企業が自社の施策を4Pで組んだと公表した資料は見つからなかった。
うまくいかなかった例と批判
- 「4Pを使って失敗した」と組織が公言した例は見つからなかった。
- 学術的な批判は上記のとおり(van Waterschoot & Van den Bulte 1992、Constantinides 2006)。Lauterborn (1990) の 4C も「4Pは売り手の言葉」という批判として出された(原典未確認)。(出典: https://doi.org/10.1177/002224299205600407、https://research.utwente.nl/en/publications/the-marketing-mix-revisited-towards-the-21st-century-marketing//Lauterborn (1990) は出典URL: 未確認)
- 長野県の報告書自身も「4Pが作り手や売り手の視点であるのに対し」と書き、4C を併用している(本文確認)。(出典: https://www.gitc.pref.nagano.lg.jp/reports/pdf/H21/03Kankyo/H21E08_27-30.pdf)
原典を読む
- 原典: Neil H. Borden "The Concept of the Marketing Mix"(英語、論文、無料で読める再録版PDFあり: https://www.impactplus.com/hubfs/Borden-1984_The-concept-of-marketing-mix.pdf )。短く、12要素と「市場の力」の両方が載っている。4Pより前の発想を知るのに最適。
- 原典: E. Jerome McCarthy『Basic Marketing: A Managerial Approach』Irwin, 1960(英語、770頁)。邦訳の有無は未確認。
- 邦訳書: フィリップ・コトラー、ケビン・レーン・ケラー『コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント 第12版』恩蔵直人監修、月谷真紀訳、ピアソン・エデュケーション、2008年。書誌は長野県報告書の参考文献欄で確認しただけで、出版社ページは未確認。4Pと4Cの対応はこの本の24-26頁を参照、と同報告書にある。
原典で確かめたこと
- 「マーケティング・ミックス」という言葉(Borden): Neil H. Borden "The Concept of the Marketing Mix"。Journal of Advertising Research の再録版("Classics, Volume II, September 1984" とページに印字)のPDFを開いて本文を確認した。脚注に「Science in Marketing(George Schwartz 編, John Wiley, 1964)の一章として掲載予定」とある。初出の巻号頁(JAR 4巻 2-7頁, 1964年)は検索結果(オックスフォード大学出版局の教材ページ)経由で、一次ページでは未確認。(出典: https://www.impactplus.com/hubfs/Borden-1984_The-concept-of-marketing-mix.pdf、https://learninglink.oup.com/access/content/baines_fundamentals-student-resources/baines_fundamentals_research-insight-1-1)
- Borden 本人の記述: この言葉は「15年ほど前から自分の授業と執筆で使い始めた」。きっかけは同僚 James Culliton の1948年の研究報告(マーケティング費用の管理)で、経営者を「材料を混ぜる人(mixer of ingredients)」と表現した一節。だから設計するものは「マーケティング・ミックス」だ、という流れ(本文で確認)。(出典: https://www.impactplus.com/hubfs/Borden-1984_The-concept-of-marketing-mix.pdf)
- Borden の一覧は12要素: 製品計画、価格、ブランド、流通チャネル、人的販売、広告、販促、包装、陳列、サービス、物流、事実の調査と分析(本文で確認)。加えて、ミックスを左右する「市場の力」(消費者・流通業者・競合・政府規制など)の一覧と対にして考えるよう述べている。(出典: https://www.impactplus.com/hubfs/Borden-1984_The-concept-of-marketing-mix.pdf)
- 「1953年のアメリカ・マーケティング協会会長講演で使った」という説は Wikipedia と解説サイトにあるが、再録版の本文には1953年の記述は見当たらなかった(本人が AMA 元会長であることは記載あり)。未確認扱い。(出典: https://en.wikipedia.org/wiki/Marketing_mix、https://www.impactplus.com/hubfs/Borden-1984_The-concept-of-marketing-mix.pdf)
- 4P(McCarthy): E. Jerome McCarthy『Basic Marketing: A Managerial Approach』、R.D. Irwin(Homewood, Ill.)、1960年、770頁。Internet Archive の書誌メタデータ(LCCN 60010852)で刊行年・出版社・頁数を確認。本文は貸出制限で開けず、4Pの記述そのもの(定義・図)は未確認。McCarthy の生没年(1928–2015)、改訂が十数回続き19版(2013年)まで出たことは Wikipedia で確認。(出典: https://archive.org/metadata/basicmarketingma0000mcca_n8s6/metadata、https://en.wikipedia.org/wiki/E._Jerome_McCarthy)
- 原典の主張(自分の言葉で): Borden の主張は「マーケティング担当者は、広告・価格・流通などの多数の手段を、市場の力に合わせて組み合わせる料理人のようなもの。正解のレシピはなく、組み合わせ全体で考え、反応は検証で確かめよ」。McCarthy はその多数の要素を、教えやすく覚えやすい4つ(製品・価格・場所・販促)にまとめた(この部分は二次情報による。McCarthy 本文は未確認)。
- 4つにまとめたのは McCarthy だけではない: Wikipedia によれば、1960年前後には Howard(製品・価格・チャネル・販促の4群)、Frey、Lazer & Kelly など複数の分類案が並立していた(Wikipedia のみ。原典は未確認)。(出典: https://en.wikipedia.org/wiki/Marketing_mix)
- 関連する派生: 7P は Booms & Bitner (1981)「Marketing strategies and organizational structures for service firms」, Donnelly & George 編『Marketing of Services』AMA, pp.47-51(書誌は検索結果のみ、未確認)。4C は Lauterborn (1990), Advertising Age 誌10月号(検索結果のみ、題名・頁は未確認)。(出典URL: 未確認)
出典
- https://www.impactplus.com/hubfs/Borden-1984_The-concept-of-marketing-mix.pdf
- https://archive.org/metadata/basicmarketingma0000mcca_n8s6/metadata
- https://en.wikipedia.org/wiki/Marketing_mix
- https://en.wikipedia.org/wiki/E._Jerome_McCarthy
- https://api.crossref.org/works?query.bibliographic=The+4P+classification+of+the+marketing+mix+revisited
- https://research.utwente.nl/en/publications/the-marketing-mix-revisited-towards-the-21st-century-marketing/
- https://www.gitc.pref.nagano.lg.jp/reports/pdf/H21/03Kankyo/H21E08_27-30.pdf
- https://www.jfc.go.jp/n/finance/sougyou/column/202212/index.html
- https://learninglink.oup.com/access/content/baines_fundamentals-student-resources/baines_fundamentals_research-insight-1-1
- https://doi.org/10.1177/002224299205600407
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