フレームワーク大全原典と根拠を確かめた解説

根拠 弱確認日 2026-10-18

なぜなぜ分析(5回のなぜ/5 Whys)

まず知る

  • 「なぜ」を重ねて、目に見える原因の奥にある本当の原因を探す手法。確認できる出どころは大野耐一『トヨタ生産方式』(1978年)で、「豊田佐吉が考えた」という話は裏付けが見つからない。(出典: https://www.diamond.co.jp/book/9784478460016.html)
  • 大事なのは回数より、各「なぜ」の答えを現場や記録で確かめること。トヨタの元幹部も「推論で答えると原因が増えて混乱する」と注意している。(出典: https://web.archive.org/web/20201121032113/https://media.toyota.co.uk/wp-content/files_mf/1323862732essenceTPS.pdf)
  • 根拠は弱い。非常に広く使われているが、効果を比べた研究は見つからず、医療分野では「複雑な問題を単純化しすぎる」との批判論文(2017年)がある。(出典: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27590189/)
  • 原因が1本の鎖に収まらない問題では、枝分かれを許すか、特性要因図や別の分析手法と組み合わせる(IPA も大きな障害では別手法の併用を勧めている)。(出典: https://www.ipa.go.jp/files/000071988.pdf)
  • 最後が「誰かの不注意」で終わったら掘り方が足りない。仕組み・手順の対策に落ちたかで判断する。

根拠の強さと限界

評価: 弱(普及は非常に広いが、効果を比べた研究は見つからない。根拠は主にトヨタの実務経験と事例)

  • 効果の検証: なぜなぜ分析を使った群と使わない群で再発率などを比べた研究は、今回の検索では見つからなかった(網羅検索ではない)。
  • 医療からの批判: Card AJ, "The problem with '5 whys'", *BMJ Quality & Safety* 26(8): 671-677, 2017, DOI 10.1136/bmjqs-2016-005849(書誌は PubMed で確認、本文は403で未開封)。PSNet の要約(確認済み)では、教育用としての価値は認めつつ、医療の根本原因分析に使うのは「複雑な問題を単純化し、プロセスがどう失敗するかの理解を狭める」ため誤りかもしれない、と論じる。人気は効果の証拠によるものではない、という趣旨の記述は検索結果の要約経由で未確認。(出典: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27590189/、https://psnet.ahrq.gov/issue/problem-5-whys)
  • トヨタ内部の注意: 簑浦照幸氏(当時トヨタ常務、グローバル調達担当)の2003年講演を収めたトヨタ広報資料(確認済み、下記)。「なぜ」には推論ではなく現場観察で答えるべきで、訓練不足だと推論で5つの原因をすぐ並べ、各原因にまた「なぜ」を重ねて何が重要か分からなくなる、と述べている。手法の否定ではなく、やり方(現地現物の欠如)への警告。(出典: https://web.archive.org/web/20201121032113/https://media.toyota.co.uk/wp-content/files_mf/1323862732essenceTPS.pdf)
  • 公的機関の位置づけ: IPA(情報処理推進機構)の障害分析手法の資料(2020年改訂、確認済み)は、なぜなぜ分析を「簡単に利用でき、問題発生時の原因分析に役に立つ」としつつ、「局所的に原因自体の深ぼりとなることが多い」とし、本格的な分析には STAMP/CAST など別手法の併用を勧めている。(出典: https://www.ipa.go.jp/files/000071988.pdf)

使われた例(組織自身の公表と、研究・参考・手引きを分けて)

① 組織自身が使ったと公表した例(数えるのはここだけ)

  1. トヨタ自動車(Toyota Motor Asia Pacific の広報記事)/2006年3月/"Ask 'why' five times about every matter."(アーカイブ: https://web.archive.org/web/20221127052017/https://www.toyota-myanmar.com/about-toyota/toyota-traditions/quality/ask-why-five-times-about-every-matter )/大野が溶接ロボット停止の例で「なぜ」を5回重ね、「ポンプにフィルターがない」という真因に至った話を紹介。工場でも販売現場でも、問題が起きたら現場へ行き「なぜ」を問い続けるべきだ、と社員に呼びかけている。/結果: 数値の記載なし。原ページは現存せず、アーカイブで確認。
  2. トヨタ自動車(広報部資料、簑浦照幸氏の講演)/2003年6月18日の講演、資料は2003年10月付とされる(日付は Wikipedia の参考文献経由)/"The 'Thinking' Production System"(アーカイブ: https://web.archive.org/web/20201121032113/https://media.toyota.co.uk/wp-content/files_mf/1323862732essenceTPS.pdf )/簑浦氏は、大野から「なぜを5回問え。そうすれば根本原因が見つかり、それを除けば二度と起きない」と命じられたと回想。正しい訓練を受ければ何十もの問題と真因を見つけ、改善できると述べる。/結果: 数値なし。
  3. IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)/2020年3月16日改訂/「情報処理システム高信頼化教訓集(ITサービス編)別冊Ⅱ:障害分析手法」 https://www.ipa.go.jp/files/000071988.pdf /実際の障害(A社のオンラインサービスが丸一日停止。社名は匿名)をなぜなぜ分析し、根本原因7つと対策を整理、そこから7つの教訓を作って公開したと自ら説明している。2016年の「教訓作成ガイドブック」(https://www.ipa.go.jp/files/000051042.pdf )でも、教訓作成の基本手順になぜなぜ分析を置いている。/結果: 再発率などの効果の数値は無い。日本の公的機関の公表例。
  4. IMVU(Eric Ries、当時同社CTO)/2008年11月13日/本人ブログ "Five Whys" http://www.startuplessonslearned.com/2008/11/five-whys.html /本番障害のたびに5 Whys をして、テスト・段階的デプロイ・監視の各層を補強。無限ループによるサイト停止を掘ると、単体テストの不足と新人研修の不足に行き着き、研修内容まで直した例を紹介。「問題の大きさに見合った対策を各段階で行う」「文字どおり5回ではない」としている。/結果: 数値なし。コメント欄に元社員を名乗る人が「後に形式が重すぎて柔軟な事後検討に切り替えた」と書いているが、本人確認できず未確認。【当時のCTO本人の個人ブログで、IMVU の公式発表ではない】

② 研究・評価として公表された試行/研究報告における実施例

  • なし(確認できた範囲で)。

③ 近縁実践・参考例(原典との対応未確認)

  • なし(確認できた範囲で)。

④ 手引き・解説(使用実績ではない)

  • なし(確認できた範囲で)。

まとめ: 組織自身が使ったと公表した例は4件(トヨタ自動車の資料2件、IPA、IMVU〈当時のCTO本人のブログ〉)。いずれも効果の数値は無い。

うまくいかなかった例と批判

原典を読む

  • 原典: 大野耐一『トヨタ生産方式――脱規模の経営をめざして』ダイヤモンド社、1978年(書誌はダイヤモンド社ページで確認。2026年10月時点で定価1,870円の表示あり)。「なぜを5回」の記述は34頁とされる(二次引用、原書未確認)。
  • 英訳: Taiichi Ohno, *Toyota Production System: Beyond Large-Scale Production*, Productivity Press, 1988(Wikipedia の参考文献経由、未確認)。
  • 批判側: Card AJ, "The problem with '5 whys'", BMJ Quality & Safety, 2017(英語の論文。オープンアクセスかどうかは未確認)。
原典で確かめたこと
  • 提唱者・年(確認できた範囲): 大野耐一(元トヨタ自動車副社長)。著書『トヨタ生産方式――脱規模の経営をめざして』ダイヤモンド社、1978年5月、248頁、ISBN 978-4-478-46001-6(ダイヤモンド社の書籍ページで書誌を確認)。英訳は *Toyota Production System: Beyond Large-Scale Production*, Productivity Press, 1988(Wikipedia の参考文献経由。本体は未確認)。(出典: https://www.diamond.co.jp/book/9784478460016.html、https://en.wikipedia.org/wiki/Five_whys)
  • 原書の該当箇所: 34頁に「五回のなぜを自問自答することによって、ものごとの因果関係とか、その裏にひそむ本当の原因を突きとめることができる」とある、と日本PM協会の講演資料(小原由紀夫氏、2017年7月)が引用している。原書そのものは未開封で、頁番号・文言は二次引用。(出典: https://www.pmaj.or.jp/library/open/regular/kns20170714.pdf)
  • トヨタ自身の説明: トヨタ・グループのアジア太平洋地域サイト「Toyota Traditions」の記事 "Ask 'why' five times about every matter."(2006年3月掲載、Toyota Motor Asia Pacific、Web アーカイブで本文を確認)。大野を「1950年代のトヨタ生産方式の開拓者」とし、「先入観なく現場を見よ」「どんなことでも『なぜ』を5回問え」と部下に言っていたと紹介。例は溶接ロボットの停止:過負荷でヒューズが切れた→軸受の潤滑不足→オイルポンプの循環不足→ポンプ吸込口に切粉が詰まった→ポンプにフィルターがない、という5段。あわせて「現地現物」と「データより事実」を強調している。旧 toyota-global.com の同名ページは現在リダイレクトされ、現行の公式サイトでは見つけられなかった。(出典: https://web.archive.org/web/20221127052017/https://www.toyota-myanmar.com/about-toyota/toyota-traditions/quality/ask-why-five-times-about-every-matter)
  • 豊田佐吉起源説: 「豊田佐吉が考案した」という記述は解説サイト(Atlassian の日本語解説など、検索結果のみ)や Wikipedia に見られるが、一次資料は見つからなかった(未確認)。上記のトヨタ自身の記事は大野だけを挙げ、佐吉に触れていない。トヨタ公式の TPS 解説ページ(global.toyota、確認済み)は TPS の源流を佐吉の自動織機(自働化)に置くが、「なぜを5回」とは結びつけていない。(出典: https://www.atlassian.com/ja/incident-management/postmortem/5-whys、https://en.wikipedia.org/wiki/Five_whys、https://global.toyota/en/company/vision-and-philosophy/production-system/、https://web.archive.org/web/20221127052017/https://www.toyota-myanmar.com/about-toyota/toyota-traditions/quality/ask-why-five-times-about-every-matter)
  • 原典の主張(自分の言葉で): 問題が起きたら現場で事実を見て、「なぜ」を重ねて根本原因(真因)に行き着き、それを取り除けば再発しない。5回という数そのものより、推測でなく現場で確かめながら掘ることが核心。

出典

  1. https://web.archive.org/web/20221127052017/https://www.toyota-myanmar.com/about-toyota/toyota-traditions/quality/ask-why-five-times-about-every-matter
  2. https://web.archive.org/web/20201121032113/https://media.toyota.co.uk/wp-content/files_mf/1323862732essenceTPS.pdf
  3. https://global.toyota/en/company/vision-and-philosophy/production-system/
  4. https://www.diamond.co.jp/book/9784478460016.html
  5. https://www.pmaj.or.jp/library/open/regular/kns20170714.pdf
  6. https://en.wikipedia.org/wiki/Five_whys
  7. https://psnet.ahrq.gov/issue/problem-5-whys
  8. https://eutils.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/eutils/efetch.fcgi?db=pubmed&id=27590189&retmode=text&rettype=abstract
  9. https://www.ipa.go.jp/files/000071988.pdf
  10. https://www.ipa.go.jp/files/000051042.pdf
  11. http://www.startuplessonslearned.com/2008/11/five-whys.html
  12. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27590189/
  13. https://www.atlassian.com/ja/incident-management/postmortem/5-whys

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