フレームワーク大全原典と根拠を確かめた解説

現象 強対策で減らす 中〜弱確認日 2026-10-18

アンカリングと確証バイアス(意思決定の罠)

まず知る

根拠の強さと限界

評価: 現象は「強」(アンカリング)/「中〜強」(確証バイアス)。対策で減らせるかは「中〜弱」(ふつうのアンカリングは大規模追試で非常に大きな効果がくり返し出た。確証バイアスも多くの研究で中くらいの偏りが確かめられている。一方、「知っている」「注意された」だけではあまり減らず、練習とフィードバックのある訓練で減るという研究はあるが、実際の仕事の判断がよくなるかは確かめられていない)。

効果量の目安: d(標準化平均差)は「平均の差が、ばらつき(標準偏差)の何倍か」。0.2 で小、0.5 で中、0.8 以上で大がよく使われる目安。

アンカリング(現象)

  • 大規模追試 Many Labs 1: Klein ほか (2014) *Social Psychology* 45(3), 142-152。36のサンプル・6,344人で13の有名な効果を同じ手順で追試(論文 PDF を開いて Table 2 の数値を確認)。(出典: https://doi.org/10.1027/1864-9335/a000178、https://repository.ubn.ru.nl//bitstream/handle/2066/131506/131506.pdf)
  • 元にしたのは Jacowitz & Kahneman (1995)。4つの問い(サンフランシスコ〜ニューヨークの距離、シカゴの人口、エベレストの高さ、米国で1日に生まれる赤ちゃんの数)で、先にアンカーの数を示してから推定させた。
  • 結果(全データでの d): 赤ちゃん 2.42、エベレスト 2.23、シカゴ 1.79、距離 1.17。36サンプルのすべてで予想どおりの向きに有意だった。13の効果の中でもっとも大きい部類。
  • 注意: 元の研究の効果量(0.93)は別のやり方(同じ人に15問、点双列相関)で計算されたもので、単純に比べられないと論文自身が注記している。サンプルごとのばらつきは大きく、著者は国ごとの知識の差(エベレストの高さなど)を理由の候補に挙げている。
  • なお、Many Labs 1 の補足資料のアンカリングの数値は2017年に訂正されたと検索結果の要約にあったが、OSF のページは開けず未確認(本稿の数値は論文本文の Table 2)。(出典URL: 未確認)
  • 「たまたま目に入った数字」は効かなかった(Many Labs 2): Klein ほか (2018) *Advances in Methods and Practices in Psychological Science*。元の研究(Critcher & Gilovich 2008、207人)は、携帯電話の名前が「P97」か「P17」かで売上予想が変わる(d = 0.30)とした。追試(6,826人)では d = 0.04(95%CI −0.01〜0.09)で、ゼロと区別できなかった(論文 PDF で確認)。(出典: https://doi.org/10.1177/2515245918810225、https://repository.ubn.ru.nl/bitstream/handle/2066/199156/1/199156.pdf)
  • つまり、数字を意識して比べさせると強く効くが、ただ目に入っただけの数字の効果はほぼ無い。「どんな数字でも人を動かす」とは言えない。
  • 専門家でも起きる: Englich, Mussweiler & Strack (2006) *Personality and Social Psychology Bulletin* 32, 188-200。経験のある法律家が、検察の求刑が無関係な出どころでも、ランダムに決めたと知らされていても、自分でサイコロを振って決めた数字でも、量刑をその数字に寄せた。専門性や経験はこの効果を減らさなかった(Crossref の要旨で確認。数値は未確認)。(出典: https://doi.org/10.1177/0146167205282152)

確証バイアス(現象)

  • メタ分析: Hart, Albarracín, Eagly ほか (2009) *Psychological Bulletin* 135(4), 555-588。自分の考えに合う情報と合わない情報を選べる場面で、合う情報を中くらい好む(d = 0.36)。ただし、考えへの思い入れが弱いとき、情報の質が低いとき、合わない情報が目の前の目標に役立つときは偏りが弱まる・逆転する(Europe PMC の要旨で確認。研究数・人数は要旨に無く未確認)。(出典: https://doi.org/10.1037/a0015701)
  • 2-4-6 課題: 原典では29人中6人しか一発で正解しなかった(上記)。その後の追試での正答率は検索結果の二次情報(約20%)しか見ておらず、一次の追試論文は未確認。(出典: https://bear.warrington.ufl.edu/brenner/mar7588/Papers/wason-qjep1960.pdf)
  • 注意: 「確証バイアス」はひとつの実験ではなく、Nickerson が言うとおりいくつもの現象をまとめた呼び名。どの研究がどの意味で使っているかで強さは変わる。(出典: https://pages.ucsd.edu/~cmckenzie/nickersonConfirmationBias.pdf)

「バイアスを知るだけでは減らない」は本当か(デバイアス研究)

  • 警告だけでは防げない(アンカリング): Wilson, Houston, Etling & Brekke (1996) *Journal of Experimental Psychology: General* 125(4), 387-402。5つの研究で、アンカリングは意図せず無意識に働き、前もって警告しても避けにくいとした。一方、その分野に詳しい人はかかりにくかった(Europe PMC の要旨で確認。数値は未確認)。(出典: https://doi.org/10.1037/0096-3445.125.4.387)
  • 頭の良さでは「自分は偏っていない」と思い込む傾向は減らない: West, Meserve & Stanovich (2012) *Journal of Personality and Social Psychology*。人は他人のバイアスには気づくが自分のには気づきにくい(バイアスの盲点)。認知能力が高くてもこの盲点は小さくならず、むしろ大きい傾向があった。盲点が無い人がバイアスそのものを避けられるわけでもなかった(Europe PMC の要旨で確認)。(出典: https://doi.org/10.1037/a0028857)
  • 「反対の理由を考える」はアンカリングを減らした: Mussweiler, Strack & Pfeiffer (2000) *Personality and Social Psychology Bulletin* 26(9), 1142-1150。アンカーの数字が「なぜ不適切か」の理由を書き出させると、専門家を使った実際の場面でもアンカリングが減った(Crossref の要旨で確認。減った量は未確認)。(出典: https://doi.org/10.1177/01461672002611010)
  • ソフトウェア技術者410人: Shepperd, Mair & Jørgensen (2018, ACM SAC)。会社の中での実験で、生産性のアンカーは見積もりを大きく動かした(robust d = 1.19)。認知バイアスの研修に出た人では d = 0.72 に減った(主に高いアンカーのとき)が、消えはしなかった(arXiv の要旨で確認)。(出典: https://arxiv.org/abs/1804.03919)
  • ゲーム・動画による1回の訓練: Morewedge ほか (2015) *Policy Insights from the Behavioral and Brain Sciences* 2(1), 129-140。米国の情報機関の研究部門 IARPA の資金による実験(著者受理版を開いて確認)。(出典: https://openaccess.city.ac.uk/id/eprint/12324/)
  • 実験1(243人、確証バイアスなど3つ): 確証バイアスの減少はゲームで d = 1.09(直後)→ 0.58(2か月後)、動画で 0.38 → 0.26。
  • 実験2(238人、アンカリングなど3つ): アンカリングの減少はゲームで d = 0.70 → 0.63(3か月後)、動画で 0.80 → 0.66。
  • 全体のバイアスの減少率は、ゲームで直後 −46%(実験1)・−32%(実験2)、2〜3か月後も −35%・−24%。
  • 注意: 比べているのは「訓練の前と後」「ゲームと動画」で、何もしない対照群は無い。測定は実験室の問題で、仕事での判断ではない。
  • 現場に近い場面での確認: Sellier, Scopelliti & Morewedge (2019) *Psychological Science* 30(9), 1371-1379。3つの専門職大学院の学生290人。上と同じ1回の訓練を、日程の都合で「事例課題の前に受けた人」と「後に受けた人」に分かれたことを利用。スペースシャトル・チャレンジャー号の打ち上げ判断をもとにした事例で、訓練を受けた人は、仮説を確かめるだけの劣った案を選ぶ割合が29%低かった(著者受理版の要旨で確認)。くじ引きではなく日程による割り振りである点に注意。(出典: https://openaccess.city.ac.uk/id/eprint/22233/)
  • 教育の場でのメタ分析(最新): Swaryandini ほか (2025) *Nature Human Behaviour*。ランダム化比較試験54本・10,941人。バイアスを減らす教育は対照群より小さいが有意な改善(g = 0.26、95%CI 0.14〜0.39、41研究・160効果)。代表性のように減らしにくいバイアスもあった。すべての研究がバイアスのリスク「不明」か「高い」で、出版バイアスの疑いもある。教室の外で実際の意思決定が変わるかは今後の課題、としている(Europe PMC の要旨で確認)。(出典: https://doi.org/10.1038/s41562-025-02253-y)

まとめ(両論)

  • 一致している点: 名前を知る・注意されるだけでは、ほとんど防げない(Wilson 1996、West 2012)。
  • 減らせるという証拠: 「反対の理由を考える」手順や、練習とフィードバックのある訓練で、実験室の課題では減る(d = 0.6〜1.1 程度、ただし対照群なしの前後比較を含む)。教育全体の平均は小さい(g = 0.26)。
  • 分かっていない点: 組織の実際の決定(投資・採用・政策)がよくなったかを、比較つきで測った研究は今回見つけられなかった(未確認)。

使われた例(組織自身の公表と、研究・参考・手引きを分けて)

① 組織自身が使ったと公表した例

  1. なし(「アンカリング」「確証バイアス」を名指しして対策を手順に入れたと、組織自身が公表した例は確認できなかった)。
  2. 日本の事例: 官公庁・企業が意思決定の手順にアンカリングや確証バイアスへの対策を組み込んだと公表した一次資料は、見つけられなかった(なし)。環境省の日本版ナッジ・ユニット(BEST)の資料も見たが、政策を作る側のバイアス対策の記述は無かった。(出典: https://www.env.go.jp/content/000234751.pdf)

② 研究・評価として公表された試行/研究報告における実施例(組織の利用例には数えない)

  1. IARPA(米国の情報機関の研究部門)が資金を出したバイアス訓練の実験/Morewedge ほか 2015/一般の参加者約240人×2実験で、ゲームや動画の1回の訓練の前後を比べた(上の「根拠」参照)。結果: 確証バイアス・アンカリングとも2〜3か月後まで減っていた。何もしない対照群は無く、実験室の問題での測定。実施=仕事での効果の証明ではない。(出典: https://openaccess.city.ac.uk/id/eprint/12324/)
  2. 専門職大学院での事例課題/Sellier ほか 2019/290人、訓練を受けた人は劣った案を選ぶ割合が29%低かった。割り振りは日程によるもので、くじ引きではない。(出典: https://openaccess.city.ac.uk/id/eprint/22233/)
  3. ソフトウェア会社での研修/Shepperd ほか 2018/技術者410人、研修でアンカリングは減ったが消えなかった(d = 1.19 → 0.72)。会社名は要旨に無い。(出典: https://arxiv.org/abs/1804.03919)

③ 近縁実践・参考例(原典との対応未確認・事例には数えない)

  1. ニュージーランド年金基金(Guardians of New Zealand Superannuation)/2019年7月/5年ごとの独立評価への回答書。評価者の「意思決定のバイアスを見つけ減らすことにもっと注意を」に「同意。バイアスと多様性(inclusion)の教育で意識を高め、採用・育成の手順を強化している。バイアスの影響を減らす道具や手順も検討する」と答えた。また「逆ストレステストや『プレモーテム(事前の失敗検討)』をもっと使うべき」に「同意」と回答。どのバイアスかは書かれておらず、採用の偏見を含む文脈なので、アンカリング・確証バイアス対策とは確認できない。(出典: https://nzsuperfund.nz/assets/documents-sys/Five-Yearly-Independent-Review-Guardians-Response-July-2019.pdf)
  2. ニューヨーク連邦準備銀行の「Applied Critical Thinking」部門: 検索結果の要約では、前提を疑う専門部署で、設立を提案した人物は確証バイアスが2008年の金融危機の兆しを見えなくしたと述べた、とされた。しかし報道記事は403で開けず、同行自身のページも見つけられず未確認。事例数に含めない。(出典URL: 未確認)
  3. 米国 国家情報長官室(ODNI)「ICD 203 Analytic Standards(分析基準)」/組織自身の公表だが、「アンカリング」「確証バイアス」を名指しした対策かは確認できない(CX 確認で③へ)(指令本文)/2015年1月2日署名、2022年1月21日に技術的修正。(出典: https://archive.dni.gov/files/documents/ICD/ICD-203.pdf)
  • 情報機関の全分析物が守る基準として、「客観性」の項に「バイアスを明らかにし、減らす推論の技法と実際の仕組みを使わなければならない」「既存の分析上の立場や判断の影響に注意し、別の見方と反対の情報を考えなければならない」と書く。分析の技法基準の一つに「別の仮説の分析(analysis of alternatives)」を入れ、各機関の長は分析官に毎年この基準の研修を受けさせることになっている(PDF 本文で確認)。
  • 結果: 効果を測った数値は指令には無い。「アンカリング」「確証バイアス」という言葉は本文に無く、「既存の判断に引っぱられない」「反対の情報を考える」という形で書かれている。
  1. イングランド銀行(英国の中央銀行)/組織自身の公表だが、特定のバイアスへの対策としては確認できない(CX 確認で③へ)(同行の報道発表、2014年11月16日)/チーフエコノミスト Andrew Haldane 氏の講演「Central bank psychology」の要旨。(出典: https://www.bankofengland.co.uk/-/media/boe/files/news/2014/november/central-bank-psychology.pdf)
  • 政策を決める人に働く4つのバイアスの一つに「集団思考」を挙げ、その中身を「周りに合わせる」「自分の前からの考えを確かめるように情報を探し、まとめる傾向」と説明。対策として、政策は個人でなく委員会で決める、外部委員を入れる(外部委員は内部委員の約2倍、多数決に反対票を投じてきた)、委員一人ひとりが自分の票に説明責任を負う、今後は政策の主流に反論する研究も公表する、と述べている。
  • 結果: 効果の数値は無い。逆に「金融危機の前、委員会は銀行の問題を十分に話し合っておらず、集団としての分析の盲点に見える」と自ら認めている。委員会制度などは法律で決まったもので、バイアス対策として作られたかどうかはこの資料からは分からない(講演者の説明)。

④ 手引き・解説(使用実績ではない)

  • 英国 国防省「Red Teaming Handbook」第3版(2021年6月、国防省の概念・ドクトリン開発センター DCDC 発行、参謀長の指示で配布): 「この手引きの大きな目的は、個人やチームの認知バイアスへの弱さを減らすこと」とし、確証バイアスとアンカリングに節を割いている。アンカリングの例に、1940年に英仏の司令部が第一次大戦の作戦(シュリーフェン計画)の再来を想定して動けなかった話を挙げる(PDF 本文で確認)。組織内で使うための手引きで、使った結果の公表ではない。なお、確証バイアスの「実証」として、会話の相手が入れ替わっても約半数が気づかなかった実験(Simons & Levin 1998、ふつうは「変化の見落とし」の研究)を挙げており、確証バイアスの実験として引くのは不正確。(出典: https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/1027158/20210625-Red_Teaming_Handbook.pdf)
  • 英国 Behavioural Insights Team(政府のナッジ部門として始まった組織)と Institute for Government「Behavioural Government」(2018年、Hallsworth ほか。当時の内閣官房長 Sir Jeremy Heywood の序文つき): 政策を作る側も同じバイアスにかかる、という報告書。確証バイアスについて「弱い政策案でも捨てにくくなる。手術で医療ミスを防ぐ確認ポイントのように、あらかじめ正式な『見直しの区切り』を設けて選択肢を本当に見直す」「証拠がまだ途中のうちに外部の検証を入れる」などを提案(イタリア政府のサイトに置かれた PDF で確認。BIT 自身のサイトの PDF は開けず)。提案であって、政府が導入した結果の公表ではない。(出典: https://performance.gov.it/system/files/tac/BIT%202018%20Behavioural%20Government.pdf)
  • コンサルティング会社の記事: McKinsey の記事が「匿名の資産運用会社が確証バイアスに気づき、反対役(悪魔の代弁者)を置いた」「匿名の銀行が取引の各段階の前にプレモーテムを入れた」と紹介している、と検索結果の要約にあったが、記事はタイムアウトで開けず未確認。会社名も非公表。(出典URL: 未確認)
  • 研修会社・HR メディアの解説記事は多数あるが、いずれも解説・宣伝で、使用実績の公表ではない。

まとめ: 組織自身の公表例は「なし」。米国 ODNI の分析基準 ICD 203 とイングランド銀行の2014年の発表は、バイアス一般を減らす仕組みの公表で、アンカリング・確証バイアスを名指ししていないため③(近縁のデバイアス実践)に置いた。研究・評価として公表された試行は3件。

うまくいかなかった例と批判

  • 「数字ならなんでも効く」わけではない: たまたま目に入った数字(製品名の数字)のアンカリングは、6,826人の追試で再現しなかった(d = 0.04、元の研究は 0.30)。(出典: https://repository.ubn.ru.nl/bitstream/handle/2066/199156/1/199156.pdf)
  • 警告しても防げない/賢い人ほど自分の偏りを認めない: 前もって警告してもアンカリングは避けにくい(Wilson 1996)。認知能力が高い人ほど「自分は他人より偏っていない」と思う傾向が強かった(West 2012)。(出典: https://doi.org/10.1037/0096-3445.125.4.387、https://doi.org/10.1037/a0028857)
  • 専門家・経験でも減らない: 法律家がサイコロの目に量刑を寄せた(Englich 2006)。(出典: https://doi.org/10.1177/0146167205282152)
  • イングランド銀行の自己点検: 委員会制度などの備えがあっても、金融危機の前には銀行の問題を十分に議論しておらず「集団としての分析の盲点」だった、と同行のチーフエコノミストが述べている。(出典: https://www.bankofengland.co.uk/-/media/boe/files/news/2014/november/central-bank-psychology.pdf)
  • デバイアス研究の質: 教育でのメタ分析では、54本すべてがバイアスのリスク「不明」か「高い」で、教室の外への効果は分かっていない。(出典: https://doi.org/10.1038/s41562-025-02253-y)
  • イラク大量破壊兵器の情報分析: 米上院情報委員会の2004年の報告書が「集団思考」によりあいまいな証拠を兵器計画の決定的な証拠と解釈した、と結論したと報道されているが、報告書の原文(govinfo の PDF)はテキストを取り出せず未確認。(出典URL: 未確認)
  • 「バイアス対策の手順をやめた」と公言した組織は見つからなかった。

原典を読む

原典で確かめたこと

アンカリング

  • 原典: Amos Tversky & Daniel Kahneman (1974)「Judgment under Uncertainty: Heuristics and Biases」*Science* 185(4157), 1124-1131、1974年9月27日(Crossref の書誌で確認)。(出典: https://doi.org/10.1126/science.185.4157.1124)
  • 本文は、大学の授業用に置かれた JSTOR 版のスキャン PDF で p.1128「Adjustment and Anchoring」の節を目で見て確認した(出版社サイトは403で開けず)。(出典: https://www.csc2.ncsu.edu/faculty/mpsingh/local/Social/f25/wrap/readings/Tversky+Kahneman-heuristics-biases-1974.pdf)
  • 1982年の論集『Judgment under Uncertainty』(Kahneman, Slovic, Tversky 編、Cambridge University Press)の第1章に「Science 1974, 185, 1124-1131 から再録」と書かれているのも確認した。(出典: https://assets.cambridge.org/97805212/84141/excerpt/9780521284141_excerpt.pdf)
  • 原典の中身(p.1128 で確認):
  • 人は最初の値から調整して答えを出すが、調整はたいてい足りない。出発点がちがうと答えもちがい、出発点のほうに寄る。著者は「We call this phenomenon anchoring(この現象をアンカリングと呼ぶ)」と書いている。
  • 回転盤の実験: 「国連加盟国のうちアフリカの国の割合」などを推定させる前に、目の前で回転盤(wheel of fortune)を回して0〜100の数を出し、「その数より上か下か」を答えさせてから推定させた。回転盤で 10 を見た組の推定の中央値は 25%、65 を見た組は 45%。正確さに報酬を出してもアンカリングは減らなかった。
  • かけ算の実験: 高校生に5秒で 8×7×6×5×4×3×2×1 か 1×2×3×4×5×6×7×8 を見積もらせると、中央値は「大きい数から」の組が 2,250、「小さい数から」の組が 512。正解は 40,320 で、どちらも大きく下回った。
  • (出典: https://www.csc2.ncsu.edu/faculty/mpsingh/local/Social/f25/wrap/readings/Tversky+Kahneman-heuristics-biases-1974.pdf)
  • 「最初」かどうか: 原典は「調整がたいてい足りない」の部分で文献(4)を引いており、調整不足の観察そのものは1974年より前からある。文献(4)が誰の論文かは今回読み取っておらず未確認。公開ページでは「1974年の論文が『アンカリング』と名づけ、広く知られる実験を示した」と書くのが安全。(出典: https://www.csc2.ncsu.edu/faculty/mpsingh/local/Social/f25/wrap/readings/Tversky+Kahneman-heuristics-biases-1974.pdf)

確証バイアス

  • 実験上の原典: P. C. Wason (1960)「On the failure to eliminate hypotheses in a conceptual task」*Quarterly Journal of Experimental Psychology* 12(3), 129-140。所属は英国 Medical Research Council の産業心理学研究グループ(University College London)。論文の PDF を開いて確認。(出典: https://doi.org/10.1080/17470216008416717、https://bear.warrington.ufl.edu/brenner/mar7588/Papers/wason-qjep1960.pdf)
  • 2-4-6 課題: 「2, 4, 6 はある簡単な規則に合っている」と伝え、参加者は自分で3つの数の組を作って「合っているか」を教えてもらいながら規則を当てる。正しい規則は「3つの数が小さい順に並んでいる」だけ。
  • 結果(要旨): 29人中6人だけが、まちがった答えを一度も言わずに正しい規則にたどり着いた。13人は1回、9人は2回以上まちがった答えを言い、1人は答えにたどり着かなかった。2回以上まちがえた人は、自分の仮説を「否定できる組」で試すことができなかった、あるいはしようとしなかった。
  • 論文が使う言葉は「confirming evidence(確かめる証拠)」と「disconfirming evidence(否定する証拠)」で、「confirmation bias」という語は要旨には出てこない。この語を誰が最初に使ったかは未確認(出典URL: 未確認)。
  • 総説(定義の拠りどころ): Raymond S. Nickerson (1998)「Confirmation Bias: A Ubiquitous Phenomenon in Many Guises」*Review of General Psychology* 2(2), 175-220(論文 PDF で確認)。定義は「すでに持っている考え・期待・手元の仮説にえこひいきするように、証拠を探したり解釈したりすること」。わざと理屈を組み立てる場合と、気づかずにやる場合を分け、後者を主に扱う。(出典: https://doi.org/10.1037/1089-2680.2.2.175、https://pages.ucsd.edu/~cmckenzie/nickersonConfirmationBias.pdf)
  • 原典どうしの関係: 確証バイアスは Tversky & Kahneman の1974年論文の3つの近道(代表性・思い出しやすさ・アンカリング)には入っていない。2つの罠は別の研究の流れから来ている。(出典: https://doi.org/10.1126/science.185.4157.1124、https://doi.org/10.1080/17470216008416717)

出典

  1. https://doi.org/10.1126/science.185.4157.1124
  2. https://www.csc2.ncsu.edu/faculty/mpsingh/local/Social/f25/wrap/readings/Tversky+Kahneman-heuristics-biases-1974.pdf
  3. https://assets.cambridge.org/97805212/84141/excerpt/9780521284141_excerpt.pdf
  4. https://doi.org/10.1080/17470216008416717
  5. https://bear.warrington.ufl.edu/brenner/mar7588/Papers/wason-qjep1960.pdf
  6. https://doi.org/10.1037/1089-2680.2.2.175
  7. https://pages.ucsd.edu/~cmckenzie/nickersonConfirmationBias.pdf
  8. https://doi.org/10.1027/1864-9335/a000178
  9. https://repository.ubn.ru.nl//bitstream/handle/2066/131506/131506.pdf
  10. https://doi.org/10.1177/2515245918810225
  11. https://repository.ubn.ru.nl/bitstream/handle/2066/199156/1/199156.pdf
  12. https://doi.org/10.1177/0146167205282152
  13. https://doi.org/10.1037/0096-3445.125.4.387
  14. https://doi.org/10.1177/01461672002611010
  15. https://doi.org/10.1037/a0015701
  16. https://doi.org/10.1037/a0028857
  17. https://openaccess.city.ac.uk/id/eprint/12324/
  18. https://openaccess.city.ac.uk/id/eprint/22233/
  19. https://doi.org/10.1038/s41562-025-02253-y
  20. https://arxiv.org/abs/1804.03919
  21. https://archive.dni.gov/files/documents/ICD/ICD-203.pdf
  22. https://www.bankofengland.co.uk/-/media/boe/files/news/2014/november/central-bank-psychology.pdf
  23. https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/1027158/20210625-Red_Teaming_Handbook.pdf
  24. https://performance.gov.it/system/files/tac/BIT%202018%20Behavioural%20Government.pdf
  25. https://nzsuperfund.nz/assets/documents-sys/Five-Yearly-Independent-Review-Guardians-Response-July-2019.pdf
  26. https://www.maruzenjunkudo.co.jp/products/9784150504113
  27. https://www.env.go.jp/content/000234751.pdf

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